私は幸せそうな姿を見ているのが辛くて
ここに逃げてきたんだ。

4.Love Candle

姉が4年ぶりに留学を終えて日本に帰ってきた。
私がずっと好きだった大輔君と結婚するために。
姉と大輔君が付き合っているのは知っていた。
けど、いつか別れてくれるんじゃないか。そう思って、私は何もせずにいたんだ。
だけど、2人は遠距離恋愛を乗り越えて今日結婚式を挙げる。


「名前もいい人見つけて幸せになるんだよ?」
純白のドレスを見に包んだ姉が私に笑いかけた。
姉は、私が大輔君のことを好きなことは知らない。
幸せの絶頂。そんな顔をして私にとって残酷な事を言う姉の顔を見たく無くてしょうがなかった。

いつも大輔君に会えるとワクワクしてたのに今日はそんな気分になれない。
これからは、幼馴染じゃなくて義理の兄になるのだから。
バージンロードで、満遍な笑顔をしながら父から姉の手を取る大輔君。
幸せそうに向かい合う二人。
そんな2人の姿を見ていたら涙が出て来た。

「あら、名前どうかしたの?」
隣にいた母は心配して小声で私に声をかけたけど、2人の姿がキレイで感動したの。
そんなウソしか私はつけなかった。

挙式を終え、2人はフラワーシャワーの中を歩き終えるとブーケトスになった。

『それじゃ、いくよ!』

「名前ちゃんもお姉さんの幸せわけてもらわないとな!」
姉の声が聞こえた後、私の近くにいた親戚のおじさんに前へと押された。
投げた花束は、まっすぐ私の所へと飛んできて、スポっと腕の中に納まった。
周りはワ〜っとなってたけど、私は姉たちに無理やり作った笑顔を見せるので精いっぱいだった。


無事結婚式は終了し、姉と大輔君は新婚旅行へと出かけた。
そのタイミングを見計らって私は両親へ話をした。

「お父さん、お母さん。私、留学したいんだけど」
「え?なんだって!」
「なんで?名前まで!やっとみちるが帰ってきたっていうのに」
両親は驚いた顔をしていた。
同然だ。これまでそんな話を出したこともない。

「ずっと前から考えてたの。絵の勉強をもっとしたいし、それにもう手続きは済ませたの。」
「なんで、相談しないんだ!」
「2人ともお姉ちゃんのことで頭がいっぱいだったでしょ?それに費用はバイトで貯めたお金で行くから問題ないよ」
「だからって・・・」
「・・・わかった。それで、いつ行くんだ。」
「来週。お姉ちゃんたちが帰ってくる前に行く」
「なんでそんな急に!」
「もう前から決まってたことだから」
私は、それから両親をなんとか説得して留学することになった。


「名前、本当に行くの?」
「こら、かあさん。名前が決めたことだ。仕方がないだろう」
両親が見送りに空港まで一緒に来てくれた。
母は話をしたあと何度も止めようと言ってきたけど、私の決意は変わらなかった。

『13:05発 ロサンゼルス行きの搭乗手続きがまだのお客様は・・・』

「時間だな。」
「名前、なにかあったらすぐ連絡するのよ?」
「わかったよ。じゃぁお父さん、お母さん行ってくるね。」

私は、両親に手を振ると歩き出した。
これでようやく日本から離れられるんだ。
きっと次に日本に帰って来た時は、2人を受け入れられるはずだから・・・。
だから、今は私を一人にさせてね。
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