偶然通りかかった公園で
目が奪われ立ち止まる
四角いボードに向かって飛び上がるボールを持った君に
思わずシャッターを切った

1.『あの日シャッターを切ったのは』

「はぁーいよいよ4年だね。ついこの前入学したと思ってたのにさー」

机に頬杖を突き、そういったのは友達の友人名前
彼女とは高校からの友人で気の知れた仲だ。

「あはは!友人名前!何言っての?おばあちゃんみたい」
「はぁ?!おばあちゃん?!名前ひっどーい!」

いい終えるとニヤッとした友人名前は、
目の前にある名前が注文したパンケーキを一切れとって口に放り込んだ

「あ!それ私のパンケーキ!!」
「おばあちゃんなんて言った罰!!」

名前は、まったくもーと言いながらも笑顔だった。

「そういえばさ、卒業制作どうするか決めた?」
「んーまだ。何にしようか決まってない」
「だよねー。」

私たちは写真学科の学生。
4年にもなり来春卒業する私たちには卒業制作が待っている。
まだ4年になったばかりだというのに、教授から早速卒業制作の話が伝えられた。
しかもうちの大学では教授がランダムで出すテーマに合わせて卒業制作を行う。
テーマは人によって違うのだ。

名前は飲んでいた紅茶に一口飲み

「友人名前はなんのテーマだったの?」
「んー?『人の温かさ。』だって。こりゃ人物撮影濃厚だよ。」
「そりゃまた。。。」
「そういう名前は、どんなテーマなのよ」
「私?私は、、、

『心を奪われたもの』

名前の発言を聞いた友人名前は心底驚いた顔をして
腰かけていた椅子が倒れるんじゃないかという勢いで言った。

「それってさ!去年卒業した主席の先輩が出されたテーマじゃん?!」
「そうみたいだね。」
「そうみたいだね。って!大丈夫なの?名前」
「正直頭が痛いよ。」

他人事みたいに呑気に答えてる様子をみて友人名前は必死に大丈夫なのかと心配してくる。
そんな姿とみて名前は苦笑いをした。


教授にテーマを言われた瞬間、
なんでよりによってこのテーマを私に?と思った。

そうしたら教授がこう言ったのだ
「名字の写真はなにかが足りない。力強いメッセージを感じる写真を撮るならこの学年で君が一番だと思っている。だが、君にとって心を奪われるような、こう、これだけは逃したくない!と。そう思うような写真を暫く見ていないことが気になっていた。
だから卒業する前にぜひそれを見たいと思ってね。」

そういわれて言葉を無くした。
恐らくある理由により私が避けてきたものを取り戻して欲しいという教授の意図を感じた。
正直、私にこのテーマをクリアすることが出来るのであろうかと不安に思った。
だが、クリアすることが出来なければ卒業はできない。
しばらくは、私の悩みの種だ。

話しがちょうど途切れた時、友人名前は席を立った。
時計を見て少し焦っている。
それを見た名前は、からかいの気持ちを込めて

「なぁに?あの年下の男の子とデート?」
「ふふふ。うらやましーでしょ?」
「仲がよろしいことで」
「名前もさ、つくらないの?彼氏。」
「私?私は・・・。って!ほら!早くいかないと遅刻するよ?」

これだと話が終わらない。
そうおもった名前は時計を指しながら友人名前に行くよう促す。

「やっばー!!じゃ、また学校でね!!」
「うん!じゃ、また!」

自分の分のお金を置き急いでカフェを出る友人名前を見送りながら名前は、ひらひらと手を振った。

友人名前を見送った後、カップに残っていた紅茶を飲み干し店を後にする。
話し込んでいたせいか、すっかり空は藍色に染まっていた。
まだ5月のせいか海側から吹き付ける風は少し冷たい。
早く帰ってドラマでもみるか!そう心の中で呟いて私は家路へと急いだ。
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