どうするか迷った時に浮かんだ顔は よく気が付く彼だった 26.『あの日シャッターを切ったのは』 名前は海岸へと向かっていた。 教授から留学の話をされた後、いろいろ悩んだ末ここで会う約束を果たせたのは連絡をして2週間たった今日だった。 すでに教授にはどうするか返事をしており、名前は留学試験を受けることを決めていた。そして奇しくも今日その結果が出て正式に留学することが決まったのだ。 約束の時間より早く着きすぎてしまった名前は、砂浜の上に腰を掛け相手を待つことにした。 波が行ったり来たりする様子をぼーっと眺めていると、急に視界が真っ暗になりだーれだ。と声を掛けられる。 仙道くん。と迷いなく答えると視界が明るくなり、なんだ、残念。とでもいいたかったような顔をした仙道がいた。 「ごめんね?名前ちゃん。遅くなって。」 「平気だよ。それよりまた約束忘れたんじゃないかって思ってたんだから」 と冗談で言うとひどいなぁ名前ちゃん。と仙道は目じりを下げて笑い名前の隣へと腰をかける。 「で?俺に相談って?」 うん。その事なんだけど・・・と、留学に行く話を仙道にする。 「それで?名前ちゃんは留学することは決めたんだろう?」 「うん」 「決めてるのに俺に相談してきたってことは、流川にどう伝えていいか迷ってる。そうだろ?」 あぁやっぱり仙道に相談してよかったなと思った。彼は言葉なくとも色々なことに気づいてくれる。 何て言おうか・・・と考えて黙っていると 「やっぱりね。そうだと思ってたよ。大よそ俺がアメリカに留学してたから参考にしたいってのと、流川のことを少なからず知ってるから相談してくれたんだろ?」 「うん。・・・仙道君ってなんでもわかるのね。」 そんなことないさ。さすがに全部は分からないよ。と言い仙道は笑うと、 「それで流川にはなんていうつもりなの?告白、されてるんだろ?」 「・・・うん。そのことなんだけど仙道君にはいってなかったことがあって。 前に私たちは両想いだけど、つきあってはいない。そういったでしょ?返事をしなかったのには理由があるの。どうしても返事をする前にやって置きたいことがあって。 それでそれが終わったら告白の返事をするって流川君と約束していたの。けれど終わる頃には日本にはもういない。今でも返事を待たせているのに、いつ帰って来るか分からない私の返事を待たせるのはどうかなって思って。」 「それでどうしたらいいか迷ってるってことか。」 「うん。」 そして仙道は暫く考えた後、真剣な顔つきになり 「名前ちゃんはさ、今でも流川が好き?」 「もちろん。私は流川君が好き」 「そうか。だったら流川にはきちんと伝えるべきだ。その告白の返事は行く前には出来ないんだろ?それも含めて流川に話すんだ。確かにこれから名前ちゃんがする話は流川にとっては残酷な話かもしれない。けど、話せばきっと分かってくれるはずだ。あいつは柔なやつじゃない。きっと大丈夫だから、話してみなよ。」 そういうと後は名前ちゃん次第だ。頑張ってね。と笑いながら立ち上がり仙道は海岸を後にした。 すでに夏は終わりを迎えようとしている。 今日の風は、少し秋の香りを感じた。 |