この出会いが今後の私の未来を決める
そのきっかけになるとは思いもしなかった。

23.『あの日シャッターを切ったのは』

皆がそれぞれ着替えている間、彩子はドリンクを作りに外へ名前は彦一と話をしていた。

「へー名前さんは、桜明美大の学生さんですか。確かあの大学は、有名な写真家をたくさん輩出してることで有名でっしゃろ?関西出身のわいでも知ってます。
そうそうさっき仙道さんに、名前さんは流川君のバスケ写真を撮ってはるって聞いたんですけど動くものを撮るの大変やないですか?」

「うーんそうね。確かに動いてるものや人物を撮ると動くしよくぶれたりして大変だけど、やっぱりここ!って瞬間の写真を撮れた時の喜びには代えられないよ。」

「そうですか。名前さんは写真が好きでいてはるんですね。わいバスケ雑誌の記者しとるねーちゃんがおるんですけど、あーぶれたわ!とかこの写真つかわれへんとかいって良く怒っとるから、名前さんの話をきけてわいも記者目指してる身として参考になります!」

「彦一君は、記者をめざしてるの?」

「そうです。ねーちゃんに影響されてっていったらへんかもしれへんけど、昔から情報収集するのが得意やったのと・・・。
陵南に入って仙道さんや魚住さんみたいなすごいプレーヤーがおるのに全国にはいかれへんで、県内で終わるのはもったいないお方たちやしこんなすごい人おるんや!ってわいだけやなて、多くの人に知ってもろうたいおもて。それで記者を目指すようになったんです。」

「そうだったんだね。夢、叶うといいね!」

「はい。頑張ります!それで名前さんは将来カメラマンになりはるんですか?」

「うーん、カメラマンにはなりたいと思ってるんだけど、どんなものを撮るカメラマンになりたいかはまだ決まってないかな。」
「そうですか。なに、わいはてっきり名前さんは、スポーツ主体のカメラマンになりたいゆうとおもてました。そうやないんですか?あの流川君を撮ってはるんやからてっきりそうやとばかり・・・」

彦一が話していると、「彦一!」と越野に呼ばれ「名前さんすんません」といい越野の元へと走っていった。

するとぞくぞくと着替えを終えた面々が部屋から出てくる。
あれ?ユニホームが違う。と名前は思いよーく見ると、どうやら高校時代に来ていたユニホームをみんな着ているようだった。

「さて、試合を始めるぞ!彩子!くじを出してくれ!」
赤木がいうと、彩子は箱を持ってきてみんなの元へと巡った。

くじ引きで決まった組み合わせは
紅組→牧、赤木、三井、長谷川、越野、福田、流川、桜木
白組→藤真、魚住、花形、小暮、仙道、宮城、神、清田
審判は彦一と彩子で行う。

各チームで話し合いをし、スタメンと戦略を決めるとそれぞれ別れて整列をした。
名前は、カメラを構えて整列する様子を撮り始める。

「それでは試合を始めます」
彦一の声で試合は始まった。


前半、それぞれなれないメンバーとの連携が合わずミスもしたが10分もすると慣れてきたのか徐々に点を重ねるようになった。
元メンバーや、現メンバーで一緒の組んだことのある面々などのスーパープレイが炸裂したりと、紅組39−白組42で前半を終えた。

休憩に入ったみんなは、タオルで汗を拭いたり、飲み物を飲んだり、各自で休んでいる。


そんな姿を名前が撮影していると仙道は近くにきて

「名前ちゃん、いい写真はとれたかな?」
「ふふ。あの海を思い出すよ、そのセリフ!」
「確かにそうだ。で、どう?流川以外も撮る感想は。」
「んーなんか新鮮かな。もちろん流川君を撮るのも楽しいけど、こう他の時間の流れというか、別のところで起こってることも撮るし、ストーリーが浮かぶというか、すごく思い出になる写真になると思う。」
「そうか。ならよかったよ。・・・それじゃぁ今度は俺専属カメラマンなんてどう?」
ニヤッとして仙道が耳元でいうと

「「「「あーセンドー(仙道さん)名前さんに何してるんだ!!」」」」
桜木と清田が仙道も方に向かってきていうと、今度は桜木と清田が揉めはじめ、いつかの試合の様子を思い出すかのように赤木と牧がそれぞれ拳骨を頭に落とした。

その場は笑いの渦に包まれていて皆楽しそうだった。
そんな姿を名前は写真に収めるとニコリと笑った。

「さーみなさん続き始めますよ」
彦一の声で休憩を終え、後半が始まった。


後半が始まってすぐはどちらも入ったら入れるの繰り返しだったが、徐々に点差がつき
紅58−白60の2点差となっていた。

残り後2分と差し掛かったところで、白組の神が3Pシュートを入れ、5点差に点差が広がったが、それに負けじと紅組の三井も3Pを放ちまた2点差に戻した。

牧は、藤真のディフェンスを切り崩すと流川の元へボールが渡り、マッチアップしていた仙道がディフェンスに入る。
すると、名前はその様子をみて、すかさず2人の方へとカメラを向ける。
それは、初めて流川と仙道のマッチアップをみたあの3on3の光景をはるかに超える凄さだった。軽い試合だとはいえ、今は同じチームメイトである流川と仙道の試合をする姿など見ることはできない。
”すごい”この言葉以外なにも思い浮かばないほど、名前は2人の姿に夢中になり写真を撮っていた。


その後も、集中して写真を撮っていると

ピピー

「試合終了」
彦一の声で試合は終了した。

結果は紅65−白65で同点であった。


試合も終わり思い出にと全員並んで写真を撮るといことになった。
名前は、並んだのを確認し「みなさんいいですか?とりますよー」そういい撮ろうとすると

「名前、こっちこい」
流川に呼ばれる。
名前は、不思議そうな顔をすると

「今日は世話になった。名字も記念にどうだ?」牧が
「名前ちゃん、一緒に写ろう」と仙道が
「名前さん早く!」と神が
「名前も俺たちの仲間だろ?いいから早く来い!」と三井が
そしてみんなが名前に言葉をかけていく

すると最後に流川が
「みんな、名前を待ってる。」

そう言われると名前は、ニコッと笑いカメラをセルフタイマーに切り替ると皆の所に行き一緒に写真に写った。

その後は、その場でミニパーティーを開き盛り上がる。
皆で談笑したり、時にはゲームをしたり、しまいには桜木が歌いだしたり。
その様子を楽しそうに撮影する名前。

そんな楽しい時間は過ぎ、そろそろ夕方だしお開きにしようという声で解散となった。

「それじゃぁ名前(さん、ちゃん)!また!」
「またね!!」
みんなと別れると、流川と一緒に歩き出す。

今日の話をいろいろしつつ家につくと
「荷物、重いのにごめんね」
「気にするな。へーきだ」
「今日は、ありがとね」
「ああ、じゃ。」

流川が自分の家へと歩き出そうとすると
「流川くん!」
呼び止められ振り向く流川に
「私、流川君にあえて本当によかった!」
ポカンとした流川表情をみて
「それだけ!じゃ、おやすみ!」
そういうと、名前は家へと入っていった。
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