ツンツン頭の彼は
やはり鋭い人だった

21.『あの日シャッターを切ったのは』

仙道と名前が帰ったあと、流川は部室から出て来た。
周りを見渡して名前がいねぇ。そう呟くと、近くにいた部員に名前さん、仙道と一緒に出て行ったよ?と言われ流川も急いで外に出たが既に2人の姿はそこにはなかった。
どこいったどあほう。と心の中で呟き携帯を取り出した。


その時、仙道と名前は海南大の近くにある公園にいた。
2人は公園にあるブランコに座った。
すると仙道はへラっと目じりを下げながら言い始めた。

「写真を受け取る前に名前ちゃんに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「いいけど、聞きたいことってなに?」
聞きたいこととは何のことだろう。そう思ったがとりあえず聞いてみようと思い返事をした。

「聞きたいことは2つ。1つ目は、名前ちゃんは、なぜ見学禁止のはずのあの体育館にいたのか。そして、2つ目は、名前ちゃんと流川はどういう関係なのか。聞きたいのはこの2つだ。」
仙道の質問を聞いてキョトンとした顔をしたがすぐ思い直し

「んーその答えはどちらも同じかな。
簡単言うと、流川君は写真のモデルで、私はその撮影者。つまり、私が流川君にお願いして写真のモデルになってもらっているの」

答えを聞いたと仙道は

「とりあえず流川との関係は分かったけど、それだけじゃあの体育館にいる理由にはならないよね?」

「うーん、確かにそういえばそうね。話すと少し長くなるんだけど、私が写真学科の学生っていうのは話したでしょ?
私、今4年だから卒業制作があって、与えられたテーマに沿って写真を撮らなくちゃいけないんだけど、それでたまたま公園で見かけた流川君のプレーをみて、流川君モデルをお願いすることにしたの。
卒業制作を完成させるにはストーリー性がないといけないから、写真1枚とって終わりってわけにはいかなくて、普段のなにげない流川君の姿も撮りたいっていうこともあったし、お願いして部活の時の写真も撮れるようにしてもらったの。
だからあの場所にいた。これで答えになったかな?」

だいぶ内容を省略したが結果としてはこうだ。
こまごまとした内容は聞かれたら話せばいいと思いそう答えた。
すると答えを聞き、納得した顔をした仙道だったが

「んーさっき、質問は2つって言ったけど、もう一つだけ。

・・・名前ちゃんは、流川のこと好きなの?」


なんとなく感じていたが仙道という人は、勘がいいなとおもった。先程の体育館のプレーをみて、この人はよく周りのことを見ているしよく気が付く。
そう思っていたからだ。

「・・・どうして?」
「ん?どうしてって、好きになっちゃったから。名前ちゃんのこと!」
それにしても仙道は、今日会ったばっかりの名前にも容赦なくさらっと物事を発言する。
まさか、今日会ったばっかりの人間に告白されるとも思わず名前は固まった。

「そんな固くならないでよ。今日会ったばかりなのに?って思ったでしょ。けど、時間なんて関係ないとおもうんだよね。」
ニコッと笑って仙道がいうと、暫くしてから名前は答えた。

「仙道君。好きになってくれたのはとても嬉しいけど、その付き合うとか・・・」

すると仙道は
「名前ちゃん。俺はね好きっていったけど付き合ってとはいってないよ?」

といいあははと笑う。
そういう仙道に名前は、あっけにとられたような顔をするが、そんなことを無視するかのように仙道は続けた。

「名前ちゃんのことは海岸で会った時に面白そうな子だなって興味をもったよ。だからもう一度あって話したいと思って写真を持ってきてって頼んだんだ。
そしたら体育館にいて正直驚いたよ。しかもあの流川が君に興味を示しているのをみて、ますます君に興味が湧いたんだ。少なくても流川は君のことが好き。そうだろう?」

ああ、この人には嘘なんか通じないだろうなと悟った。
「私と流川君は両想いよ。けど付き合ってはいない」

名前がそういうと仙道は、そうか。といいブランコから立ち上がる。
あ!写真と名前が言いながら差し出すと仙道はそれを受け取り、そろそろお迎えが来るころだろうな・・・と呟くと

「名前ちゃん、気を付けて帰ってね。あ、今の話は流川には内緒で。」
仙道はヒラヒラと名前に手をふり、帰っていった。

名前はいったいなんだったんだろうと思ったが、自分も帰ろうと思い歩き始めると、

「おい。」
目の前には、待っていたかのように自転車を降りた流川がいた。

「流川君。」
「家にもいねーし、どこ行ってた。送ってくって約束してただろ?」
そういえば、仙道に導かれるように体育館を出て来た為、流川には何も言えずじまいだったことを思い出した。

「ごめん」
「それに、電話でろ。心配しただろ」
携帯をみると流川からの着信が何度もあった。
それをすまなそうに下を向く名前の姿をみると

「ほら、早く乗れ」
流川は自転車の荷台に乗るように促した。

自転車で帰る途中、名前は「流川君ありがとう」といい、ギュッと回していた腕に力を込めた。

言葉では聞こえなかったが、何をいったかわかった気がして流川は前を向いたまま、少し照れくさそうにしていた。
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