もつれた糸はとかれた
俺は今、君に会いたくて仕方がない。

17.『あの日シャッターを切ったのは』

流川はとにかく走っていた。
今日はバスケの時間以外一日中ボーっとしていたのか乗ってきた自転車の存在など今の流川の頭の中には微塵もない。
ただ名前に早く会いたい。その気持ちだけで頭がいっぱいだった。

目的地につき、家を見ると明かりが薄く漏れていた。
早まる気持ちを抑えることができず駆け足で階段を上り、家の前に着くと呼び鈴を鳴らす。

するとはーいと返事をする声が聞こえてくる。
あと少し、もう少し。

すると扉は開かれ、流川を見た名前は驚いた顔をして
「る、流川・・・?」

少し開かれたドアをつかみ流川は思い切りドアをあけ、目の前にいる名前の腕を自身に引き寄せると思い切り抱きしめた。

「ちょ・・・ここ外だから!とりあえず中に・・・」
そう言うと、流川は抱きしめていた腕を一旦緩め、玄関に入りドアを閉めるとまた再び抱きしめる。
様子が変な流川を気にかけ、流川君?どうしたの?と声をかけると

「・・・悪かった。連絡しないで」
先程よりギュッと腕の力が強くなる。

「流川君・・・」

それから2人は一言も話さず暫くそのままでいた。
どれくらい時がたっただろうか、流川はゆっくりど抱きしめていた腕を外し、名前の目をまっすぐ見据えた。


「好きだ」

そう一言いった。

「え?今何て?」
「俺は、名前さんのことが好きだ」

流川は先ほどよりさらに真剣さを含ませ名前のことを見つめていうと、

「・・・流川君。とりあえず中に入って?」
名前は、流川を部屋に入るようにと促した。


「そこに座って?」
流川は黙って頷くと言われた席へと腰を掛ける。

「コーヒーでいいかな?それともお茶の方がいい?」
「・・・どっちでも」
返答を聞いた名前は、わかった。じゃぁコーヒーにするねといい、コーヒーを入れるとそれをテーブルに置き流川の座っている向かい側の席に腰を掛けた。


しばらく2人とも黙っていたが名前が話を始めた。

「流川君。私ね?流川君と出会えて本当によかったって思ってるの。ずっと撮れなかった人物撮影もだんだんできるようになってきたし、流川君のお陰で本当の意味で私も立ち直り始めたんだなって。
だからすごく流川君に感謝してるの。それに、流川君にモデルを頼んで、少しずつ流川君と過ごす時間が増えていろいろ知っていって。すごく魅力的な人だなって思った。」

名前は一口、コーヒーを飲むと話をつづけた。

「ここ数日流川君に会えなくて、連絡もつかなくて。なにかあったんじゃないかって心配して。少し、あの時のことを思い出してた。それでね、考えてみたの。私は流川君のことどう思ってるのかなって。会えない間そのことを考えてて、やっと今の気持ちがわかったの。私にとって流川君は大切な人。ずっと見ていたいと思えた人。
・・・だけど、付き合うとかそういうのは、今の私にはまだ出来ない。どうしてもやり遂げなくちゃいけないことがあるから。だから、それが終わるまで私の返事、待っててもらえないかな?」

流川をじっと見ると、流川は暫く考え、わかった。と一言だけいった。
それを聞いた名前は、ありがとう。といい流川に微笑んだ。


またしばらく2人で黙り込むと今度は流川が話はじめた。

「それで・・・先輩への返事はどうするんだ。」
「な、なんでそれを・・・?」
「さっき、先輩が言ってた。名前さんに告白したって」
「・・・そうなんだ。」
そうか神君、流川君に話したんだ・・・

「・・・先輩は、催促をしたりしないで返事を待っててくれると思う。だから気まずいとか、そんなことおもわねぇで練習見に来い。」
「・・・そうだよね。うん。明日からまら練習見に行くよ。」

微笑んで名前がいうと、流川は少し嬉しそうにした。


「あ、そうだ!桜木君にお礼をしなきゃ!色々お世話になっちゃったし!」

そういうと流川の表情は飽きれた顔に変わり

「あんなどあほうに礼なんかする必要ねー」
「そんなことないわよ?すごくいい人だった。きっと桜木君の周りには素敵な人が沢山いるんだろうな。それに面白いし、何事にも一生懸命よね。」
名前が桜木を褒めるものだから今度は少し不満そうな顔をした流川。
それを見ていた名前はクスクスと笑い始めた。

「なんだよ。」
「ううん。流川君、かわいいなと思って!」
そういい笑う姿をみて、流川は不満げながらも、少しだけ柔らかく笑みをみせるのであった。

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