思いがけない一言は
新たななにかを生み出す

10.『あの日シャッターを切ったのは』

「じゃ、少しだけ」と返事をした流川に、名前は、自転車はこっちに止めてねと指を指し促すと、乗ってる自転車に鍵をかけ駐輪場へ運ぶ。
ほんとは契約している人しか置いちゃいけないけど、少しだけだし問題はないだろう。

自転車を置いて玄関口に流川が戻ると2人して階段を上る。
2階の一番奥にある角部屋が名前の部屋だ。
鍵を開けて家に入ると『今、タオル持ってくるから待っててね。』といい玄関に流川を残して部屋の中に入る。

そのまま洗面所に向かい、少し大きめのマフラータオルをもって流川の元に戻り

「はい。これ使ってね。」
「・・・どうも」

流川はタオルを受け取ると体をふき、お邪魔しますといって部屋に入った。
殺風景な部屋。無駄なものは何もない。

「あはは。何もない部屋でしょ?必要最低限のものしかないの。」
「・・・いや、いーんじゃねーの?ごちゃごちゃしてると落ち着かねー」
「そういってもらえると嬉しいよ。」

名前は笑って答えると、流川の服の濡れ具合を見て

「よかったらお風呂に入って?入っている間に洋服洗って乾かすから。」
「いや・・・・」

さすがに風呂に入るのは・・・と思い流川は断ろうとすると、だいぶ濡れてるしそのままだと風邪ひいちゃうよ?という名前の言葉に少し考えてから、じゃ。お言葉に甘えて。と、ありがたくお風呂に入らせてもらうことにした。

「バスルームは向かって右奥だから!洗濯物は籠に入れておいて?様子見て持っていくよ」

その言葉を聞くと流川はコクリと頷いてバスルームへと向かう。


流川がバスルームに入るのを見届けると名前は窓際にある椅子に腰かけて息を吐いた。
寄っていって。そうはいったもののこの家に男性を上げるのは久々だ。
なんだかんだで緊張する。
「まぁ、流川君を更に知る為のいいきっかけだよね」
そう呟くと、そろそろいいかな?と立ち上がりバスルームのドアの前にいくと

「流川君、入っていい?」
「・・・おー」

返事を聞いてから中へと入り、籠を持ちながら

「流川君、洗濯するね。洗濯が終わったら声かけるからそれまでゆっくりお風呂に入ってて。」
「・・・わかった」

返事を聞いてバスルームを後にし、隣の部屋にある洗濯機に流川の服を入れ、ボタンを押してからリビングへと戻る。
時間も時間だしきっとお腹空いているだろう。そう、思い冷蔵庫の中を開ける。
材料をみてから今日はシチューにでもするか。そう呟き、流川が風呂から上がるまでの間に夕食つくりを始めた。


暫くすると洗濯の終わりを告げる音が鳴り、洗濯機へと向かい服を取り出すと乾燥までちゃんと済んでいた。
それをもって再びバスルームに向かう。

「流川君、入って大丈夫?」
「・・・おー」

中に入り、服とタオルの入った籠をそっと下に置き

「洗濯終わったから。もう出ても大丈夫だよ。」
「・・・わかった。もーでる。」
「わ!わ!ちょっとまって!今ここから出るから!!」

返事をしたと思ったらいきなり風呂場のドアを開けようとする流川に声をかけ急いでバスルームを後にする。
び、びっくりした!急に出る。なんて言うんだもん、驚くじゃない!と顔を赤面させつつリビングへと戻る。
平常心。平常心。そう呟き、コンロの前に行くと先ほどまで作っていたシチューの鍋に火をかけ温めなおす。


少しするとリビングにやってきた流川はさっきは悪かったと一言呟いた。
きっと先ほどのお風呂の件を言っているらしい。
なので、笑って大丈夫だよ。少し驚いたけどね。と言った。
すると匂いに気づいたのか流川は

「・・・なんか作ったのか?」
「うん。流川君がお風呂入ってる間にシチューをね。流川君シチューは好き?」

流川がコクリと頷いたのをみて「じゃぁ食べようかと」声を掛け食器の準備を始めようとすると、急に腕を捕まれた。

「・・・風呂、入らないのか?」
「え?」
「・・・さみぃだろ。飯は後でいいから入ってこい」
「いいよ。冷めちゃうよ?」
「・・・そんなの温めなおせばいーだろ?」

流川は引く気がないな。そう感じた名前は、『じゃぁ、入ってこようかな。』と流川に言うとバスルームへと向かった。

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