君と過ごす休日は
まぶしい日差しと、急な大雨

9.『あの日シャッターを切ったのは』

空けとけ。そう言われた土曜日がやってきた。
これまで土日に流川と過ごしたことはなかった。
たいてい部活がないと家で寝てると言われていたのと、
私自身の予定あり今まで平日しか流川に会うことはなかったのだ。
ただいま、午前11時半。
そろそろ彼がやって来るころだろう。
そう考えていると携帯の着信音がなった。

着信:流川楓

「もしもし!流川君、おはよう。」
「・・・はよ。ついた。降りてこい」

それだけいって電話を切った流川に相変わらずだなと思いつつ、戸締りをし家を出る。

階段を下りると玄関口に、カットソーにジーパンというラフな格好をした流川がいた。
私服を見るのは初めてだった。
背の高い流川にはよく似合っていて思わずかっこいいなんて思ってしまう。
いけない!いけない!そう思いなんとかその考えを振り切り流川に声をかけた。

「流川君!お待たせ」
「・・・おせえ。早く乗れ」

そういわれ自転車の荷台に跨ると流川は自転車を漕ぎ始める。
しばらく行くと駅につき自転車を降りるよう言われると、流川は駐輪場に向かい、
名前はその場で流川は待つ。自転車を置いて戻ってきた流川に

「電車乗るの?」
「ああ。横浜に行く」

そういうと改札をくぐり横浜方面の電車に乗る。
横浜方面の電車は休日もあってか満員ではないがやはり人は多い。
背の低い名前は、出入り口に近い背もたれに寄りかかり立っていて、その斜め前に流川がいる。
「大きいな」と、流川をチラっとみて呟くと「なんだ?」と首をかしげて問う流川に、なんでもないと笑顔で答える。
よく周りを見ると流川を見てかっこいいとか大きいとか言っている女の子が沢山いた。
あれって彼女かな?違くない?そうじゃない?と。なんともありがたいようなありがたくないようなことまで。。。

すると、電車が急に揺れた。
寄りかかっていたが手すりにはつかまっていなかった為に前よろけると大丈夫か?といって流川が名前を支えた。
支えてもらうのに流川の手が腰に手が回ってきて、顔が真っ赤になりそうになるが、
なんとか抑えてありがとう笑顔で礼をいった。

暫くすると、横浜に着き私たちは電車を降りる。
すると流川は、「いくぞ」といい手を出すと、驚いた顔をする名前に

「・・・混んでるから。はぐれるぞ」

そう流川に言われて、これは彼なりのやさしさなんだと思い手を取った。

しばらく大通りを通っているとスポーツ屋が見えてきて、ここか。と流川は呟き向かっていくと店に入る。
2人で店内をぐるぐる回りお目当てのバッシュを探していると、名前は視線を感じ振り向いた。
すると、こちらに向かって指をさす赤い頭をした大きな男はこちらに向かってくる。


「流川君。」
「・・・なんだ?」
「あれ・・・」

こちらに向かってくる彼のほうに流川の視線を向けさせると、それを見た流川は、はぁ・・・とため息をついた。

「おい!ルカワ!!なんでここにいんだ!」

と向かってきた彼は流川に声を掛ける。
どうやら2人は、知り合いらしい。

「うるせーお前にはかんけーねー」
「かんけーねえーとは何だ!」

2人は口論をはじめたと思ったら、彼は流川の横にいる名前を見てハっとした顔をすると

「なんだ!ルカワ!デートか?このキツネ野郎にこんなキレイな人が!!!ムムム!許せん!!」

そういうとなぜか名前の手を握り

「私は桜木花道というものです!あ、あなたのお名前は?」
「え?私?私は名字名前です。よろ・・・」

照れているのか桜木は顔を赤くしながら名前に自己紹介をすると、名前を聞かれた名前はとまどいつつ答えてるのを見ていた流川に、急に腕を引かれ

「こんなどあほうに名乗る必要はねー」
「どあほうとはなんだ!」

流川に悪態をつかれたのに腹が立ったのか、桜木は握ったいた手を離し流川に怒鳴りつけた。
だが、そんな桜木を無視して

「はぁ・・・。ここには探していたものはねぇ。行くぞ。」

といい、名前の手を握ると店の外へと向かう。
後ろでは桜木がこちらに向かって叫んでいたが、流川は特に気にする様子もなくずんずん前に進んでいった。


店を出て、来た道を歩き暫くすると流川はいった。

「・・・悪かったな。」
「ん?なにが?」
「どあほう・・・いや桜木が」
「平気よ。楽しそうな人じゃない。」
「・・・ならいいけど。」

名前の言葉を聞いて一瞬不満げな顔をしたが、すぐいつもの表情に流川は戻した。
あれから、もう一軒の店に行き無事にバッシュを買った流川。
ふと時計をみると針はもうすぐ3時を指そうとしていた。

「流川君。少し休憩しない?喉乾いたでしょ?」
「そうだな。どこか入るか」

そういい近く喫茶店へと入った。
私はアイスティー、流川君はアイスコーヒーを頼み席へと座る。

「バッシュあってよかったね!」
「おー」
「ほかに見るものとかある?」
「・・・特には」
「じゃあさ、一か所だけ行きたいところがあるんだけどいいかな?」

流川君はこくりと頷いた。

飲み物がなくなると2人は喫茶店から出て、行きたいと言っていた場所へと歩き出す。
さっきは流川に引かれていた手を、今度は名前が引いている。
少し歩くとそこにはレトロな洋館がたっていた。

「・・・ここか?」
「うん!そう。ここ!」

流川に返事をすると、持ってきていたモノクロのカメラを取り出し写真を撮り始める。
このアングルがな・・・とか言いながら嬉しそうに写真を撮る名前の姿に流川は自然と薄く笑みをこぼす。

暫く撮っていると、流川の視線に気づいた名前は、

「ごめんね。退屈だったよね?」
「・・・別にあきてねー。気にすんな」
「ほんとに?」
「ほんとだ。」

じゃ、あと一枚だけ。そういい写真を撮り終えると、行こうか。と名前は、言い2人ならんで駅へと向かい始める。
すでに空は、赤く染まっていた。

暫くして駅につくとそのまま改札へと向かい鎌倉方面への電車に乗る。
車内では、『神奈川はこれから強い雨が降るでしょう。強風にも注意してください。』
そんな、ニュースが流れていた。


最寄りの駅に着き、流川の自転車へと跨る。
それまで明るかった空は、厚い雲に覆われていた。

「雨、降るかな?」
「・・・かもな」
「家につくまで降らないといいね」
「・・・そうだな」

しばらく自転車を漕いでいると、大粒の雨が顔に当たった。

「あー駄目だったか。。。」
「飛ばす。しっかり捕まっとけ」

流川はスピードを上げ名前の家へと向かった。
家に着くころにはすでに服はびしょ濡れだった。
雨は止む気配はなくどんどん強くなっていくようだった。

急いで自転車を漕いでいるとやがて名前の家に到着し、
流川はそのまま自宅へ向かおうとすると

「流川君まって!!」

呼び止められて、なんだ?と顔をする流川に

「雨もすごく強くなってきたし、よかったら寄っていって?」

言われた流川は驚いた顔をしつつ、コクリと頷き自転車を降りた。

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