君のことを知るたびに
もっと知りたいとおもってしまう
これってもしかして恋?ですか?

8.『あの日シャッターを切ったのは』

あのカフェで流川君と話した後、私は時間を作っては海南大学へと出かけていた。
もちろんバスケの様子も見るようになり、海南大のバスケ部の人とも顔見知りになっていた。

「名前さーん!!!」
「あ、清田君!こんにちは。今日も元気ね!」

名前に元気に声を掛けてきたのは、海南大バスケ部の清田。神君の高校時代からの後輩である。

「毎日のように流川なんか見ててたのしーんすか?俺でよかったらモデ・・・」
「ノブ、煩いよ。」
「あ!神さーん!ちーっす」
「神君。こんにちは!」
「名前さん!こんにちは」

中学の後輩の神君。
私が海南大のバスケ部に出入りを許されたのも彼のおかげである。
流川君が口下手だということはこれまで話していて理解していたつもりだが、監督やキャプテンの牧君に許可をとるのにも説明不足でうまく伝わらず頼んだ経緯を知っている神君にも協力してもらい、私は今ここにいることができている。
本当に頼りになる後輩である。

「今日は何時まで見ていくんですか?」
「んー今日は最後まで見ていこうかな!」
「じゃぁ帰り・・・」

そう神が言いかけた時、前から流川がこちらに歩いてきて名前を呼んだ。

「・・・おい。」
「なに?流川君。」
「・・・今日最後までいるんだろ?帰り、送る。」
「うん。ありがとね!」

そういうと流川はスタスタその場を去る。

「神君?さっきなにか言いかけてなかった?」

すると清田が

「あ!それは、か・・・」

清田が何かを言いかけたとき、神が清田の口をふさぐ

「名前さん!なんでもないです!」

さ!いくぞ信長!と言いながら清田を引きずりコートへと向かっていった。
ようやく離してもらえた清田は小声で神に問う

「いーんすか?一緒に帰ろうとしたんじゃないんすか?」

すると苦笑いしながら神は、

「いいんだ」

そういって練習を始めた。


さっ!撮るぞ!とカメラを構える。
もちろん写真撮影も禁止ではあったが、名前は、フラッシュをたかない条件で写真撮影の許可を得ていた。
これまで自主練までいることはなかったが。今日はいつも以上に時間があり沢山写真を撮れそうだ。
いつも以上に撮影への熱が入る。

名前は、何度もここに通うにつれ気づいたことがあった。
スポーツは、さまざまな表情を写すには最適なものだということだ。
走る姿や飛ぶ姿はもちろん、チームプレーでその場に起こるドラマがある。
試合に勝てば喜びや嬉しさ、負ければ悲しみや悔しさ。
毎回何が起こるのか分からなのだ。
そんな何が起こるか分からない瞬間を撮れることは、名前にとってとてもワクワクすることだった。


時間はすぎ、時計の針は午後8時半を指したころ、自主練を終えた流川がこちらにやってきた。

いくぞ。という声に名前は、うんと答え、流川の後ろを歩いて体育館を離れる。
そのまま校門まで行こうとすると、途中で流川は、校門で待ってろ。そういって、
駐輪場へと向かって歩き出す。

一人校門へ向かう名前は、空を見上げる。
今日は天気がよかったせいか、月が輝き星の光も強い。

名前が、海南大バスケ部に通い始めてから2週間が経とうとしていた。
彼は、言葉数は少なく表情も乏しい。
けど、その少し変化がある表情を捉えたいとおもってしまう。
この前現れた黒猫に逃げられてがっかりしている様子。
流川君が好きだという飲み物を渡したときの少し嬉しそうな表情。
少しの変化をとらえたときの幸福感は本当にたまらない。
そう考え事をしてたら、目の前に来た流川が、

「・・・おい」
「あ!流川君」
「・・・ボーっとしてると攫われるぞ」
「あはは!私なんて誰も攫わないよ」
「・・・どあほう。 ほら、後ろに乗れ!」

名前は、流川にいわれ自転車の荷台へと跨る。
乗ったのを確認して流川はペダルをこぎ始めた。
それから2人はいろいろなことを話しながら家へ向かう。
ほとんど流川は、「おー」とか「へー」とかしか返事はしないけど名前は、それで満足だった。
暫くして家につくと名前は荷台から降り、

「流川君、遅くに送ってくれてありがとう。明日は講義があっていけないから、また月曜にね!それじゃぁ気を付けてね!バイバイ!!」

といいながら家へと向かおうとしたとき、流川に

「・・・おい。」

と、呼び止められる。

「ん?何?流川君」
「・・・土曜空けとけ。昼前に迎えに行くから。家についたら連絡する。」
「・・・へ?」
「・・・バッシュ。見に行くからついてこい」

そう言いのこし自転車を漕いで行ってしまった。

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