君はあの日のことを忘れていたけれど
私には忘れられない日だよ
あの日出会わなければこんな日はなかった

7.『あの日シャッターを切ったのは』

「まったく。流川君には驚かされたわね!」
「ほんとに」

あの衝撃的な試合以来、流川君にはあっていない。
モデルの了承してくれた後、私は流川君に連絡先を聞いた時

「・・・暫くは時間つくれねぇ」
「・・・遠征がある。2週間は戻らねぇ。」
「・・・戻ったら連絡する」

そう言われてからもうすぐ2週間。
そろそろ連絡がある所だろう。

すると着信音が鳴る。
着信:流川楓

「流川君だ!」
「名前!早く出なって!!」

そう言われ、急いで通話ボタンを押した。

「もしもし!」
「・・・俺だけど。。。」
「ああ、流川君!遠征お疲れさま。」
「うっす。時間できる。いつがいい」
「いつがいいかな?えーとねぇ・・・」

すると会話を聞いていた友人名前が携帯を奪い、流川に『今日!今日、あって話そう!』というと、名前は、『こら!!!友人名前!なにするの!』といい、急いで奪い返し携帯に耳を当てると

「別にいーけど。今日、時間あるし。」
「え?いいの?!」
「かまわねぇ。・・・それで、どこで会う。」
「かまわないならいいんだけど・・・じゃぁ駅前のカフェで、時間は午後5時で大丈夫?」
「わかった。それじゃ」

そういって電話は切れた。
電話が終わった瞬間、私は友人名前を睨みつける。
すると友人名前はニヤニヤした顔で

「よかったじゃない!これで早く会えるわよ?楽しんできて!!!」
「まったく!!友人名前ったら!!!」

たまに友人名前の行動には驚かされるが、今日ばかりは感謝しないとなと心の中で思った。


友人名前と別れモノクロのカメラをもって約束のカフェへと向かう。
約束の時間は5時。今は4時半を過ぎたばかり。
早く着きすぎたな?と思いながらもウィンドウからカフェの中をのぞくと、窓際の席に流川は座っていた。
ウォークマンで音楽を聴きながら目を瞑っている。

綺麗・・・。

思わずもっていたモノクロのカメラで写真を撮っていた。
あ!いけないけど思いながらもこれは卒業制作には出さないし、せっかくだから秘密にしよう。
そう決めて流川の待つカフェの中へと入りお気に入りの紅茶を頼むと、流川君。と声をかけ席に座った。
流川君はふぁ・・・とあくびを一つして「ども」と挨拶をする。

「ごめんね、遠征明けで疲れたでしょ?」
「・・・別にへーきっす。」
「あ!友人名前がごめんね!あんな急に・・・」
「・・・いや。別に。」

話さなきゃいけないと言う事は分かっているが、あの流川が目の前にいると思うと緊張してなかなか言葉がでてこない。
そんな様子をみて流川は促すように

「・・・で?・・・話って」
「・・・ごめん!そうだよね。!
えっと流川君。この前の試合の時に少し話したと思うけどけど、頼んだ通り私は学校の卒業制作で写真を撮ることになっているの。
テーマは『心を奪われたもの』。
テーマにそって10枚位の写真を使ってストーリーを考えるってものなんだけど、そのために流川君の表情や自然な姿を沢山カメラに収めたいと考えているの。
撮った中から選んでストーリーを組み立てて行きたいから、後々このショットが撮りたいってお願いするかもしれないけど、基本的には流川君は普段通りにしていてくれたらいいいから。」

要約してこちらの意思を伝えると流川はしばし考えた表情をしたあと

「・・・。俺にできるのか?」
「・・・え?」
「・・・そーいうのって、大事なやつ相手とか、家族とか、そーいうのがいーんじゃねぇの?あんたと俺は会ったばかりでお互いなにも知らねぇし。」

流川にいわれてハッとした。
名前は、あの時から人物写真をほとんど撮っておらず、見ず知らずの人を撮るのは久々なこと。
先程は黙って撮影してしまったとはいえ、また以前のような事にならないとも限らない。
なんせ、流川とはまだ出会ったばかりでお互いのことをまだ何も知らないのだ。
今回はほとんど何も知らない流川にモデルを頼む以上、迷惑をかけるわけにはいかない。
撮影を成功させる為にも、お互い多少なりとも距離を縮めた方がいいだろう。
そう考えた名前は、真剣な目をしながら


「・・・流川君、時間をくれないかな?」
「?」
「私に流川君のことを知る時間を」
 
流川は正直名前の申し出に困惑したが、あんなに真剣な目をして言われ、それに一度引き受けると返事をしている。
なによりも、彼女になにがこんなに真剣さを与えているのか気になった流川は

「・・・じゃあ、これから好きな時に俺のことを知れ。できるだけ協力するから」

そう返事をした。

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