クリスマス
クリスマスなんて、無ければ良いのにと思ってた。
「リョーマ先輩、リョーマ先輩!!」
クリスマス1週間前。やけに嬉しそうなこいつは、俺の思い人である、名前。
恋人ではない。でも、ただの知り合いというわけでもなく…友達以上、恋人未満のこの関係は、心地好くもどこかもどかしい。
「リョーマ先輩!聞いていらっしゃいますか?」
ああ、むくれてる。
そんな姿も愛くるしくて、小さく俺の袖をひっぱる名前を見て少しだけ笑ってしまう。
「あ、なんで笑ってるんですか!…ちょっと笑ってないで聞いてくださいよー!」
はいはい分かったから、と顔を向けてやれば、ふくれ面は笑みに変わる。
「…で、どうかした?」
言葉尻だけ見れば冷たくあしらっているようだが、そうではない。冷たくあしらうぐらいなら、構うことさえしないからだ。
名前はそれを知っているのか、オレのその態度には何も言わずにニコニコとしている。彼女の用件は簡潔だった。
「誕生日プレゼント、何が欲しいですか!?」
ああもう、やっぱり笑ってしまうじゃないか。
柄でもない。
それをあまり見られないように、彼女を抱き締める。
驚いたような名前を無理矢理押さえ込んで、耳元で言ってやった。
君がいれば何もいらない
クリスマスプレゼントじゃなくて、誕生日プレゼントと言ってくれる君に感謝を
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