採寸


03

3Aは、氷帝カーニバルにて、執事&メイド喫茶を行うことになった。

「あ、いたいた、苗字ちゃーん!」
『んー、どしたのー?』
「メイド服作るから、サイズはからせてー!」
『サイズ...だと!?』
「うん、スリーサイズ!」
『寄ってこないで変態!』
「なんで!?」

クラスメイトの服飾担当の伊賀ちゃんと、冗談を言い合いながら採寸場所となっている家庭科準備室へ向かう。お祭りムードの校内は、廊下のいたるところに荷物が置いてあり歩きにくい。

クラスの出し物が決まってから、さっそく担当分けをした私たち。今日は家庭科室で男子の、家庭科準備室で女子のサイズを測っている。もちろんメイド服、執事服制作のためだ。服飾担当は、クラスの家庭科部の子がメインとなってやってくれている。広報を担当している美術部の子も、看板やポスター作成までは暇だからと服飾担当を手伝っているのだが、デザインの方面でものすごくノリノリだ。広報、服飾担当は、自分たちの作ったものが、売り上げを左右することを理解しているため、今までになく精を出しているのだ。


「てゆーかさー、この間街で忍足くん見かけたんだよねー」
『へえ、なんか珍しいねー』
「でしょ。しかもさーなんか壁の近くに座り込んでんの。後ろから見たから、気分でも悪いのかなって心配になって近づいたわけ。」
『うんうん。』
「近づいてわかったんだけどさー、気分悪そうじゃないんだよね。」
『ん?』
「なんか壁に隠れてどっかこそこそ覗いてる感じなの。」
『......うん、それで?』
「まあ街中で見かけるのも珍しいし、一応声かけようとしたんだけど。そのとき、私気づいちゃったんだよ」
『...ごくっ』
「忍足くんが...その近くで誰か待ってるぽい綺麗な女の子の足をガン見してることに!」
『うわきっもー!』
「だよね、まじひいたわー」
『ありえないー!』
「知り合いって思われる前にソッコーで離れたし!」
『正しい判断!』


あははははと忍足のキモさについての話に花を咲かせながら、ガラガラと家庭科準備室の中に消えて行く2人。
ほぼ同時にガラガラと音がして、家庭科室の扉が開いた。中から少年が出てくる。富永だ。

「...?おい忍足、お前なんでそんな荷物の陰に座り込んでんの?」
「なんでもない、なんでもないんや...ぐすっ」


荷物だらけの廊下の荷物の後ろに隠れるように座り込んだ忍足を前に不思議そうに首をかしげる富永。
ガラガラと音がして、また家庭科準備室の扉が開いた。あはははは順番まだだったねーと笑いながら、先ほど家庭科準備室に消えた2人が出てきた。


『あれ、忍足に富永何やってんの?』
「…ははっ」


苗字の問いかけに、膝を抱えながら乾いた笑いを浮かべる忍足。涙目である。


「おい忍足しっかりしろよ!」
「ちょ、忍足涙目じゃんきもーい!」
『うわほんと!意味わかんない!』
「...ぐすっ」

忍足 は 心 を 閉ざした


「忍足?おい忍足ー!?」
「ちょっと、富永も何叫んでんの、うるさいんだけどー」
「!?」


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