if彼氏忍足とのクリスマス


if 忍足と付き合っていたら。クリスマス編


『うわー、人いっぱい!』
「キラキラしてんなぁ」
『わ、あっちもすごい!きれー!』
「あ、ちょお待ち」
『わ、』
「はぐれたら困るやろ?」
『う、うん..忍足、手あったかいね』
「手ぇあったかい人は心が冷たいらしいで?」
『あー』
「あー、てなんやねん」
『うそうそ。いつもあったかい心もらってるもん』
「...恥ずかしいこと言うなぁ」
『素直な気持ちだしー』
「はいはい」


今日は付き合って初めてのクリスマス。25日はクリスマスパーティという名の家同士の交流がある為、クリスマスイブデートだ。
友達や恋人と一緒に過ごすクリスマスというものに、テンションが上がる。1、2年生の頃も仲良かったんだし、一緒に過ごすクリスマスは初めてじゃないだろう、なんて思うかもしれないが、なんと、初めてのことで。向こうは全国区の部活に所属して、レギュラーを勝ち取っている存在なわけで、クリスマスだからといって休みにはならない。部活を引退した今年だからこそ叶ったことだ。また友人たちもそれなりに裕福な家庭の子が多く、みんなパーティや部活に勤しんでいる為この時期は忙しく、結果クリスマスを友人と過ごしたことがなかった。
街を彩るクリスマスカラー、オシャレな飾りたち、楽しそうに行き交う人々。全てが新鮮で、全てが輝いてみえる。なんて素敵な日なんだろう、なんて考えながら街を歩く。隣を歩く忍足も、何だか楽しそうで幸せな気持ちになる。あれもこれもと目移りして振り回してしまっているのは自覚しているのだが、それに文句も言わず付き合ってくれる彼には頭が上がらない。


るんるん、と鼻歌交じりでクリスマスムードに彩られた街を歩き、クリスマス限定メニューのスイーツに目を輝かせる。そんな彼女を見つめ、思わずにやけてしまう口元を片手で隠す。恐らく顔はだらしないことになってるやろうな、なんて思いながらも今この瞬間の幸せを噛み締める。あれは、これは、と色んなものに興味を示して動き回る彼女に振り回されることすら楽しいなんて、末期かもしれん。
昼過ぎに待ち合わせをして、綺麗な街を歩いて、買い物して、美味しいもの食べて。ベタかもしれんけど、大好きなラブロマンスによくあるクリスマスデート、なんてものに憧れていて。いい具合に日が沈んで、イルミネーションの点灯が始まった。俺なりに調べて見つけたスポット。近くの大階段に大きなツリーがあって、それがすごく綺麗で評判らしい。そこでキスをしたカップルは永遠を約束される、とかそんなお約束な噂もあって、せっかくやしそこに行きたい、なんて。綺麗なツリーがあるんやって、と言えば、行きたい!と乗り気になってくれた。大階段に座って点灯されたツリーを見る。キラキラと光るツリーの写真を撮ることに満足したらしく、写真を撮るのをやめ、ツリーと同じぐらいキラキラした笑顔でその綺麗な光を見ていた。ひゅう、と風が吹く。


『わ、さむ。』
「ほんまやなぁ。ビルの間で風が吹き抜けるんやな」
『わ、ほんとだ。あ、あのお姉さん足綺麗』
「どこや」
『ほら、あの長いスカートの。風でちょっとスカートめくれた時に見えたんだよー』
「ほんまや。でもちょっと細すぎん?」
『えーあれぐらいになりたい』
「いややわ。今ぐらいが一番やで」
『そうかなぁ?でもやっぱ、、っくしゅっ』
「風が当たるからか。ちょお待ちや」


足が綺麗なお姉さんを見ながら話をしていた2人であったが、寒さでくしゃみをした苗字を見、忍足が立ち上がる。なんだ?とはてなを浮かべながら忍足を目で追う。階段の1段上真後ろにきたかと思うと、苗字を足と足の間に挟んだ状態で座った。


『わ、』
「これなら寒ないやろ?」
『うんー。このながーい足が風除けになってねー』
「あいたっ」
『長すぎて腹立つ』
「理不尽」
『あ、でもこれいい肘置きだわ』
「お役に立てたようで。もたれてええで」
『やったー』


自分の両脇にある長い足をばし、と叩いて見たものの、その予想以上に筋肉がついてしっかりした足に、つい手を置く。いい肘置き、なんて言いながら触っていたいだけ。私変態?なんて思っていたら、もたれていいなんて言葉が降ってきたもんだから、お言葉に甘えてばふっともたれかかる。


『わー忍足あったかい!』


その小さな体が、すっぽりと忍足の腕の中に収まる。あったかいねなんてにこにこしながら言われたら、あまりの可愛さに顔面崩壊してしまう。プレゼントはいつ渡そう。
いつの間にか始まったクリスマスプチコンサートに手拍子をしながら乗り出し気味で食い入るように見つめる彼女を見ながら、早くなる鼓動を抑える。離れてしまった体が少し寂しいなんて思いながら、今がチャンスだ、と瞬時に判断した。

バレないようにそろりとプレゼントを取り出す。


「名前」


名前を呼んで気を引く。


『え、名前...』
「じっとして」
『え、え!?』


驚いたように声をあげる彼女に後ろから腕を回す。抱きしめられるのか、とびく、とした彼女の首にそっとネックレスを付ける。そのままぎゅ、と抱きしめら耳元でメリークリスマス、と囁いた。行動を起こす度にぴく、と動く彼女に込み上げるものがある。

しばらくネックレスを手にぼーと見つめていた彼女は、はっと現実に帰ってきたようだ。


『ありがとう!!!』


ば、と振り返ると輝かんばかりの満面の笑みで忍足を見上げる。その笑顔のあまりの可愛さに、思わずその口にちゅ、とキスを落とした。ん、と小さな声を出す彼女に、笑みが漏れた。


『もう。ほんとに、ちょっと突然のことだらけで混乱してるんだから!』
「すまんすまん」
『いきなり名前呼びなんて、』
「呼びたなってん」
『バカ。』
「バカやなくてアホ言うてや」
『あほー』
「それならええわ」
『もう』


照れたように、呆れたように言うと、ネックレスを見る。気に入ったのかにこにこと言葉の割に表情は柔らかい、それどころかにやにやと笑みがこらえきれないといった様子だ。
あまりの可愛らしさに堪えきれず、再度腕を回して抱き寄せた。もうここから逃がさないと言わんばかりに強く抱きしめ、首筋に顔を埋める。ふわり、と良い香りが鼻をかすめ、そのまますん、と香りを嗅いだ。


『ひゃ、』


こそばゆそうに体を強ばらせる彼女。


「なあ、今日ずっと思っててんけどな」
『んー?』
「香水変えた?ええ匂いやな」
『あ、気づいた?』


その声に顔を上げる。彼女はへへーとドヤ顔でにやりと笑いながら見上げるとそのままちゅ、と小さくキスをした。


「っ!」
『ふふ、あのね?これ。』


差し出したのは小さな箱。クリスマスカラーの包装が非常に可愛らしい。


『お揃いなんだ、匂い。』
「香水...?」
『そ。ゆ、侑士モテるからさ?匂いがお揃いだったら、なんか私のだよって主張できる気がして、』
「!」


顔を赤らめながらふい、と目をそらす。


『だから、』


だから、つけてね?なんて少し潤んだ瞳で真っ直ぐ自分を見る可愛らしい彼女に、思わずもう1度口付けを落とした。


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