最近、お父さんが晩ご飯をつくることが多くなった気がする。…や、それに不満があるのか?と聞かれると、別にお父さんのご飯がまずいってわけじゃないから、不満ってわけでもない。お父さんのご飯はむしろお母さんよりおいしい(なんてお母さんに言ったら絶対泣かされるから言わないけど)
お父さんとお母さんは仲がいい。でもやっぱり最近の二人にはどこか距離がある気がして、哉太さんに相談してみたら「それは倦怠期だ」と言っていた。けんたいき。僕にはそれがよくわからないけど、幼馴染みである哉太さんが言うのだから間違いないのだろう。僕はその言葉を胸にしまって、いつかお母さんかお父さんに聞いてみようと決めたのだ。
とある日曜日の昼下がり。 お父さんは今日の晩ご飯の食材を買いに出かけてしまって、僕はお母さんと二人っきりになった。そのときにふと思い出したから、なんとなく聞いてみることにした。
「ねえお母さん、」
「なーにー?」
「お母さんとお父さんは、今『けんたいき』なの?」
ドサッ
玄関のほうで、何かが落ちる音がした。お母さんと顔を見合わせてから、なんだなんだと二人で玄関を覗き込むと、
呆然とした表情で玄関に突っ立ってるお父さんがいた。足元にはスーパーの袋。
「お父さんおかえりー」
「おかえり錫也」
だがお父さんは無反応…いや、反応はないけど変化はあった。口をわなわなと震わせている。
「咲月!!!」
「ぎゃああ!なによ?」
途端にダッシュでお母さんに近付いて、お母さんの両肩を掴む。あまりの神速っぷりにお母さんも僕もお父さんの動きが見えなかった。すごいなあ、お父さん。忍者みたい!
そんな忍者みたいなお父さんは、お母さんをぎゅっと抱きしめると、
「俺はまだお前を愛してる…!!たから、捨てないでくれ…!!」
「え?あー、うん。大丈夫大丈夫」
必死なお父さんに対してお母さんの反応はどこか薄っぺらかった。
お父さんが買ってきた食材で、お母さんは晩ご飯作りに取り掛かろうとキッチンに行ってしまった。お父さんはと言うとソファに座ってうなだれていた。なんとなく暗いオーラがぼんやり見える。 その隣で絵本を読んでいたら、不意にお父さんが呟いた。
「………なあ、息子よ。俺はどうしたらいいと思う………?」
「まずは『べっきょ』からじゃないかな!」
「ちょっと待て。それ誰から教わった?」
「お昼の番組ー!」
「昼ドラああああああ!!!!!」
あああ子供に何見せてんだ咲月ーーー!!!!と叫んでうるさい馬鹿錫也!と罵倒されていた。お父さん…。
「じゃあ『りこん』?」
「やめろよ泣きたくなる…」
溜め息を吐いて目頭を押さえるお父さんは本当に泣きそうだった。 はあ、とお父さんが今日何度目かわからない溜め息を吐いたとき、
「錫也」
ぱっと顔を上げると、そこにはおたま片手にエプロン姿で無表情のお母さん。
お父さんを見ると、微かに震えている。きっと今のお父さんの頭の中では『べっきょ』や『りこん』とかが頭の中をぐるぐると巡ってるに違いない。
そしてお母さんは無表情のまま、こう言い放ったのだった。
「愛してるよ」
愛がない わけじゃない
--------------惺さん
こんにちは! 錫也と夢主の子供か…どんなショタに…いえ、どんな子供にしようかと考えていましたが至極明瞭なお子さんになってしまいました。なん…だと… こんなぐだぐだで本当に申し訳ない! リクありがとうございました!
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