倉持姉と御幸


(倉持姉が教育実習生で青道に来た設定)




「へー倉持にこんな美人な姉ちゃんがいたとはな」

『御幸くんは本当に洋一が言ってた通り女たらしなのかな?』

「はっはっは、とんでもねぇこと言いやがるなアイツ」

もう日も沈み、闇に包まれるグラウンド脇を通りかかると御幸くんを見かけたので、声をかけたらこんなことを言われて。知り合ったその日にこんなこと言うのだからきっと若くして色々経験してしまってるに違いない。洋一はそんな子になっちゃダメよ、と心の中で言った。

『洋一はいないの?』

「今は俺一人っすよ。倉持は多分部屋でゲームしてますから」

そんなところを昔と変わってないなぁ、と思い出して笑った。

「先生さ、倉持のこと大好きでしょ」

『そりゃあ可愛い弟だもの。大好きだよ』

「顔に出てる」

先生としてまずいんじゃねーの?なんてニヤリと笑う御幸くんを私は見る。

『だって先生である前に洋一の姉なんだもの』

それは先生じゃなくても変わらないの。そう言って、御幸くんに手を振った。

『また明日ね。遅刻しないように早く帰んなよ』

そう言うと遅刻なんかしませんよ、と声が聞こえてさよならと言われた。私は御幸くんに背を向けて歩き出した。


「…これは倉持が最大の敵だな」

御幸がそうぼやいた声は素振りの音でなかったことにされた。



◎気が向いたらシリーズ化します


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