倉持に慰められる
「俺野球のことしか今は考えらんねぇわ。悪い」
御幸くんが私の横を通り過ぎた。いや、わかってたんだけどね。フラれることくらい。野球に負けてしまうことくらい。
はぁー、なんてでっかいため息をつけば、虚しさはもっともっと大きくなって。涙が出そうだったから顔を伏せて机に突っ伏した。
「ヒャハ、なまえじゃん?」
入り口辺りから聞こえたのは同じクラスの御幸くんと同じ野球部の倉持。あーもう今はあんたになんて会いたくないの。そう思ったので寝たフリをすることに決めた。
「あれ?寝てんのかよ?」
なまえ?って呼ぶけど、無視無視。
「お前何泣いてんの?」
倉持のそんな言葉が聞こえて、思わず目を開ける。するとたしかに頬には涙が伝っていた。
『うっさいなー。もうあんたには関係ないでしょ?』
邪険に扱ってしまう。倉持は悪くなんてないのに。八つ当たりだ。
「いやそりゃそうだけどよ。気になんじゃん」
私の席の前に座ったこいつはどうやら私を慰めてくれるつもりらしい。
『私にだって泣きたいときくらいあんの!バカ』
「じゃ泣いとけよ!めちゃくちゃ!」
倉持はそう言って私の頭を乱暴に撫でた。こいつはこいつなりにきっと私を慰めてるつもりなのだろう。でもせっかくセットした髪がぐちゃぐちゃだ。
…でもまぁいいか。
御幸くんにもフラれちゃったんだし。顔なんてそれ以上にめちゃくちゃだし。
『…ありがと。何か倉持見てると元気出るわ』
そう言って、思いっきり鼻をかめば、倉持は驚いたような顔を一瞬したが、次の瞬間にはいつものようにヒャハ!と笑って私の頭を撫でてくれたのだった。
◎御幸くんにこっぴどくフラれたい。クズな御幸くんにひどいことされたい。倉持くん可愛い。
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