『今日はね日本では十五夜って言うの』

そう言って、なまえは俺の部屋から飛び出した。任務でやらかしてスクアーロに怒鳴られてへこんでるとこ慰めてやってたのに勝手なやつ。王子がサボテンにしてやりてーし。

足音が聞こえる先に俺も向かう。ずいぶん張り切ってるようで、なまえは庭のはずれまで出てきていた。 その時見えたなまえの大きな瞳に月が映る。

『綺麗でしょう?』

そう言って笑った。へこんでたなまえはどこかにいなくなってしまったかのように笑っていた。

「月見て何すんだよ」

俺がそう尋ねると、なまえはんー、と唸って答えた。

『お団子食べたりするの』

幸い日本食が好きな俺は団子が何なのか知っていたので、へー、と返した。 ただ月を眺めているだけなのに幸せそうななまえ。もう意味わかんねーし。

『昔の日本の文豪はね、I love you.を月が綺麗ですねって訳したんだって』

「バカじゃねーのソイツ」

『そういうことじゃないよ』

笑いながら言うなまえを腕の中へ引き寄せる。

『もしベルなら、I love you.を自分の好きな言葉で言い表せって言われたら何て言うの?』

そんなことを聞くなまえ。俺の目を知る数少ない人の一人であるなまえと目が合った。

思いは通じあってるけど、お前の目に誰かが映るのも、スクアーロに怒鳴られてへこんでるのも。納得いかねー俺だぜ?こんなこと言ったらなまえは俺を何て思うだろう。

「内緒」

『えー!教えてよー!』

頬を膨らませて怒るなまえ。その頬を摘まんで、俺はししし、と笑う。

「嫌だっつーの」

俺はそのままなまえのうるさい口を塞いでほんの小さな聞こえるかわからないほどの声で言った。

傷つけてもいいですか

俺だけがお前の目に映るのが。
俺だけしか考えられなくなるのが。
無理だと言うのなら、せめてそれだけは俺だけで。





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