「じゃ、あと迎えに来いよな」
俺はそう言って、ヴァリアー専用ジェットから降りた。久しぶりの日本。あー寿司食いてーなーなんて思いながら荷物持ちから荷物を奪って歩いた。
この日から数日休むためにどれだけ任務を立て続けにいれていたか。フランにはあーあの女のためですかーお疲れ様でーす、とかってバカにしたような無機質な声で言われて。あのカマ野郎には素敵ね〜!とくねくねしながら言われて。居心地の悪い時間も長かった。でも、やっと来れたのだ。日本で俺を待っているなまえに会う日がやっと来たのだ。
ダラダラ歩いてる時間すら惜しくて、俺は荷物を肩にかけて屋根にとんだ。薄暗いし多少屋根と屋根の間飛んだってまぁ大丈夫だろ。もしなんか言うやつがいたらサボテンにしてやるし。そんなことを思いながら急いでなまえの家へ向かった。
チャイムをならすと、慌てた足取りがドアの向こうのベルにまで聞こえた。
『ベル!おかえり!』
ドアを開けて満面の笑みで俺を迎えたのはずっと会いたかったなまえで。
「ただいま」
そう言うと照れたように笑うなまえ。俺は玄関に入って、なまえの家のドアを閉めた。
『今日はね、ベルが来るから!じゃじゃーん!』
なまえがテーブルを指差した。
『ケンタッキーのクリスマスぽいのにしたの!』
いや今日クリスマスじゃなくて俺の誕生日なんだけど。
心の中ではそう言った。
「あり?俺言ってなかったっけ?俺クリスマスまではお前んちいるけど」
『あー言ってたかも!でもこのコップほしくて!』
なまえは2個重ねるとツリーになる、セットで買うとついてくるおまけを見て幸せそうに笑った。たしかにお前好きそうだけどな。
「まーいいか。俺クリスマス寿司食べたい」
『いいね!ケーキも食べよう!』
恐らく寿司とチキンは日程的に逆の日にした方がよかった気はするが、なまえが笑ってるからそれでいい。
『どうする?もう食べちゃう?』
なまえが言った。
「そうだな。腹減ったし」
なまえはそう言うと、ボジョレー・ヌーボーをキッチンからとってきた。
『ベルと一緒に飲もうと思って我慢してたの〜』
なまえはそう言ってグラスに注ぐ。本当にこいつずーっと笑ってんな。なまえが座ろうとするから、俺はなまえを呼んだ。そして何の気なしに俺のそばに来たなまえに触れるだけのキスをした。恥ずかしそうななまえ。何度もこんなのしたはずなのに。だからなのか。俺はお前以外の女に見向きすらしなくなった。
夕食が終わると。なまえは自分の部屋からプレゼントを持ってきた。
『誕生日おめでとうベル!』
なまえがくれたのはワインレッドの無地のシャツ。
『ベルボーダーばっかり自分だと買っちゃうでしょ?それにね、そのシャツ見たらベルのこと思い出しちゃって。似合いそうだなーって思ったの』
まぁボーダーはたしかに好きだけど。でもなまえがくれたシャツもいいと思う。
「しし、大切にする」
俺は丁寧にたたむなんて出来ないので、なまえにきれいにたたんでもらって袋にしまった。食後のエスプレッソはなまえが嬉しそうに持っていたあのカップで。
『ベルがまた帰っちゃってもね、私このカップ見て頑張ろうと思ったの』
なまえがそう幸せそうに笑った。何で待つのは苦しいはずなのにそんな幸せそうなんだよ。俺はそろそろなまえをイタリアに連れていくかなーと考えた。
エスプレッソを飲んでいると、なまえはまたキッチンにいってしまった。
「なまえ何してんの?」
『何ってろうそくたててるんだよー』
なまえは多分手作りらしいケーキを持ってきた。
『たくさんたてちゃったね』
二十数本と刺さったろうそく。ケーキの装飾見えねーじゃん、と笑えばそうだねーってなまえが返す。ただの会話なのに。何でこんなに心が満たされるのか。
……やっぱり、なまえと一緒にイタリア帰ろう。
ベルはそんなことを思いながら、ろうそくの火を吹き消したのだった。
◎あとがき
クリスマスのお話まで続きます。
とにかくベル誕生日おめでとう!
※ちなみにそのケンタッキーのカップはCMで見て私がほしくなっただけ。(笑)
Bentornato:(伊)おかえり
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