木村さんのお店に寄った後、マンションに帰ってきたら、たまたま大坪さんに会った。

『あ、大坪さんこんにちは!』

大坪さんは戸締まりを確認し、私の方へ向き直った。

「おお。買い物の帰りか」

『はい。木村さんに千笑美を見せに行ったところで』

私がおぶる千笑美を見せると、大坪さんは嬉しそうな顔をした。

「もう2人目か…。早いな、結婚したのもついこの間のような気がするのに」

『そんなおじいちゃんみたいなこと言わないで下さいよ!大坪さんも早くお相手見つけて私と清志に紹介して下さいね?』

じゃ、と私は頭を下げて大坪さんと別れた。



「…もう蓮もお兄ちゃんか…」

大坪がふぅ、とため息をついてマンションを出たことは大坪しか知らない。でも大坪が今から会いに行くのはなまえの夫である宮地清志だということがなまえに伝わるのは、今夜であった。








その日の夜のことだった。私は夕飯の準備をしていた。そんな時、私の携帯が着信を知らせた。

『蓮ー?携帯とってきてー』

「はーい」

蓮がとてとてと歩き、私に携帯を手渡した。ありがとう、と頭を撫でて画面を見ると、そこにはまあまあ見慣れた名前。

『もしもし?高尾君?』

「あ!はい!そうなんですけど、ちょっと今から皆でなまえさんち行ってもいいですか?」

『え!?今から?』

「はい!あ!別に気とか使わなくていいですよ?ただ宮地さんが「高尾お前なまえと何話してんだー?埋めんぞ」

高尾君の声の向こうから旦那様の声が聞こえた。てか、酔ってる?

「ちょ!宮地さん!ぎゃーっ!」

高尾君の悲鳴が聞こえ、あちらの携帯が落ちたような音が聞こえた。何だか嫌な予感しかしない。

「もしもし?なまえさんですか?お電話変わりました。緑間です」

電話から落ち着いた声が聞こえた。

『あ、緑間君?どうなってるの?』

ちょっと怖いが、一応聞いてみた。

「ちょっと久しぶりに集まったんですが、宮地さんが酔っちゃいまして…」

嫌な予感的中。

『ごめんねー?めんどくさいでしょ?何か作っておくから清志連れてきてもらってもいい?』

「わかりました。すみません。ありがとうございます」

『他は高尾君と木村さんと大坪さんでいいかな?』

「はい。じゃどうにかして宮地さんは連れて帰ります」

『うん。お願いするね』

ではまた後で、と電話を切り、私は食材を冷蔵庫の野菜室から出した。

『蓮ー!今日皆来るから早めにお風呂入っちゃおうね』

「皆来るの?」

キッチンのドアの外で話を聞いていたらしい蓮が目を輝かせた。

『うん。ちょっとパパが大変らしくて。お風呂つけてきてちょうだい』

「うん!」

蓮は嬉しそうに駆け出した。

清志は何でこんな早い時間からあんなにべろべろに酔っ払ってしまったんだか。正気に戻ったらちゃんと怒らなきゃ、なんて思いながら私は夕飯の量を3人分から7人分に増やした。



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