ピンポーンとチャイムが鳴った。夕飯も後もう少しで出来上がるちょうどよい頃合い。

私は玄関を開けに行った。

『はーi「なまえー!!」

清志が飛び出してきて、思い切り抱きつかれた。その勢いもすごくて私は後ろに倒れてしまった。

『清志!危ないでしょ!?』

「なまえー」

相当酔っちゃってるらしく、私の声なんか聞いちゃいない。私の首もとに頭をぐりぐりしてきて、くせっ毛がくすぐったい。

「なまえさん、こんばんはー」

高尾君が言った。

「これじゃまるで三児の母だな」

先刻会った木村さんが言う。

「宮地、そろそろなまえちゃんから離れてやれ。なまえちゃん顔真っ赤だから」

大坪さんが言った。それはだって恥ずかしいのだから許してほしい。昔のチームメイトの前でこんな状況を晒して平常心でなんていられるわけがない。

どうにかして、清志が私から離れ、他の4人が家に入った。

「高尾兄ちゃんだ!真ちゃんもいる!!」

蓮が高尾君に飛びついた。

「おー蓮一週間ぶりくらいかな?」

高尾君が蓮の頭を撫でた。高尾君は相変わらずのコミュニケーション能力でうちの息子を手懐けた。今ではパパである清志の次に五人の中では仲がいいと思う。

私は出来上がった夕飯を食卓においた。

『ありがとうございました。ちょっと大したもの準備できなかったんだけど夕飯もしよければ食べて行ってね』

「よっしゃ!俺なまえさんの料理大好物だし!」

高尾君が蓮の手を取り食卓についた。他の三人も続く。清志はソファで寝てしまっていた。

「パパは?」

蓮が尋ねた。

『疲れて寝ちゃったみたいだからとりあえず食べよ?』

そう言うと蓮はいただきます!と手を合わせて言った。他の皆も料理に手を着け始める。
私は清志に薄い毛布を掛けて、席についた。

「酔った宮地さんって部活の時の怖いのどこいった!?って位甘えたっすよね」

高尾君が言った。

『しかも記憶にないんだから質悪いよね』

私も返す。すると今度は千笑美が泣き出した。

『何かな?』

千笑美はまだしっかり開けない目を涙でいっぱいにして泣く。どうやらお腹が空いてしまったみたいだ。

『何か千笑美お腹すいちゃったみたいだから少し席あけますね』

「大変だな、やっぱ母親は」

大坪さんが言った。

『でも楽しいですよ?』

そう笑って答えたら、より一層大きな泣き声がした。はいはい、となまえは奥の部屋に行ってしまった。



「何つーか、母親って偉大っすね」

「ああ。マネージャーやってた時よりもっと頼れる人になったな」

「宮地もたまには酔いつぶれんのもいいけどしっかりした父親になってほしいと思うな」



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