『木村さーん!トマトとピーマンとジャガイモとパイナップル下さーい』
「おお!なまえちゃんじゃねぇか!!」
店先で木村さんを呼んだら、すぐに奥から出て来てくれた。
「身体はもういいのか?」
『おかげさまで退院しました』
頭を下げると、木村さんがそれはよかったと笑う。
「ママ、僕ピーマン嫌いなんだけどー」
私の服の裾を引っ張ったのは、長男蓮。
『好き嫌いしないの。木村さんとかパパみたいにおっきくなれないよ?』
そう言うと、ちょっと拗ねてそっぽを向いた蓮。夫である清志にそっくりなので、その可愛さに折れそうにもなるが、もうママも5年目。子育てだってやっと慣れてきたんだから!
「蓮」
木村さんが蓮を呼んだ。そんで頭を撫でて話し出す。
「妹がやっと家に来たんだぞ?かっこいいとこ見せてやんなきゃだめじゃねぇか。もうお兄ちゃんなんだぞ?」
そう言うと、蓮はお兄ちゃんの言葉に惹かれたのか、素直に頷いた。
木村さんは野菜の入ったビニール袋を私に手渡しながら、私がおぶっている千笑美を見た。
「千笑美ちゃん、可愛いな」
『はい。もう清志が浮き足立っちゃって大変なんですよ』
私がそう言うと、木村さんが笑った。
「宮地も丸くなったな。ま、宮地にもよろしく伝えといてくれよ」
『はい。また来ますね』
「おう」
私は蓮の手を取り歩き出した。
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