第二章-02


「俺の名は“シン”。バルバッドへ向かう所だった商人なのだよ」

 そう言って笑みを浮かべた男――シンは道中で盗賊に身包み全てを取られてしまったという。衣服まで取られてしまいあのような姿になってしまった、という訳だ。
 アラジンの衣服を借り先程の恐ろしい姿からはなんとか逃れたものの体格差のある二人だ、シンが身に着けた彼の服はパツパツになっており、今にも破れそうになっている。……違う意味で恐ろしい姿になったが、これ以上どうすることも出来きない上本人も気にしている素振りはなかったのでこれに落ち着くこととなった。
 丘を越えればバルバッドに到着することや、そこの宿泊所に彼の仲間達がいるということから道中を共に行くこととなった四人。丘を越え彼らを迎えたのは広大なバルバッドの海だった。

「バルバッドは首都こそ大きくはありませんが、古より交易によって栄えてきた大海洋国家です。様々な人種や文化が交じり合う国ですから、きっと不思議なものが沢山見れるかもしれませんね」

 様々な食物の売られる市場や大勢の人々、それ等を横目にしながら説明するアリシャールの話を聞くアラジンは生まれて初めて見るものに興味がいっぱいといった様子だった。これは何?あれは何?と爛々とした目で彼女の手を握り尋ねる彼に対し一つ一つ丁寧に答えるアリシャールは姿はまるで仲の良い姉弟を見ているように見え、後ろを歩いていたシンは笑みを浮かべた。

「さあ着いた!俺がいつも泊まっている国一番の高級ホテルだ。――宿代は俺が出そう。助けてもらった礼だ。好きなだけここに泊まっていくと良いよ」

 そう言って指さしたのは立派な門構えをした建物だ。豪華な装飾のされた建物は勿論中に入っていく客層も着飾った人物が多く、彼の言う通りここが国一番の高級ホテルだということが分かる。
 そんなホテルに泊まれると聞きはしゃぐアラジンとモルジアナにシンも満足そうに笑い堂々と建物に入っていく。……が、彼の出で立ちから当然門番たちに止められてしまった。
 騒ぐシンと門番たちを見ながらアリシャールが小さく溜息を付いたと同時に若い男の声がシンの名を呼ぶ。その声の方へと視線を向ければ、そこには頭巾をかぶる白髪の男と赤髪の長身男の姿があった。

2012/12/02
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