第一章-14


 ――眩い光と共に現れた粉雪はアリシャールの周囲を取り囲むように舞い、やがて金属器を装備した腕を覆うかのように集まり始める。光が収まり盗賊たちの目に入ったのはまるで氷の彫刻のような透き通った槍と武具に着けた片腕だった。

「さて、何方からお相手をして下さるのかしら?」

 無表情であった先程様子とは一変し別人ではないかと思う程に楽しげに薄ら笑いを浮かべる彼女だが、光に照らされ美しく輝く金属器と片腕の歪なコントラストも合い余りどこか妖艶な雰囲気さえしてくる。
 ――思わず恐怖も忘れ見惚れてしまう盗賊たちの中から突如悲鳴が聞こえ、声の元へ視線を向ければ蹲り悶絶する複数の盗賊とアリシャールの姿があった。
 男たちを見れば胸元から横一文字にばっさりと切られ血を流し地面を濡らしている。それを見つめ自身の槍に付着した血を払い落とす彼女と地面に飛び散った仲間たちの血を見て盗賊たちは息を飲んだ。

「こ、この糞ガキがああああ!!」

 背後から切りかかる大柄な男の剣を避け槍の柄部分を鳩尾に叩き込んだ直後、自身の掌から溢れ出した粉雪をそっと吹きかければ男を囲む様に雪が舞い氷漬けにしてしまう。
 恐怖の表情を浮かべたまま氷彫刻となった男の首元に槍を突き付け、彼女は取り囲む盗賊たちへと微笑を浮かべ口を開いた。

「このままこれを砕けば血肉残らず木端微塵。砕けた氷の欠片たちはやがて日の光を浴び蒸発する。……貴方たちもこうなりたいですか?」

 彼女の静かな問いかけに力が抜けしゃがみ込む男たちに追い打ちをかけるように現れたウーゴの姿に今度こそ男たちは悲鳴を上げ逃げ出し始める。どさくさに紛れ氷漬けにした男の氷を溶かせば、男は涙を流し感謝の言葉を口にしながら仲間と共に逃げて行った。
 ボロボロになった彼の背をアリシャールは見送ると、砦の巨大な岩壁を登っていくウーゴとアラジンを見上げ彼女もまた捕まった人たちが逃げる道を作るべく岩壁に向かって槍を振り下ろせば空中に無数の氷の塊が現れ一直線に壁へと突き刺さっていく。爆音を立て崩れる壁には巨大な穴を作り上げられていた。

 金属器の武器化を解除し、崩れた岩を器用に避けながら外へと出たアリシャールを迎えたのは世話になったキャラバン長や仲間たち、そして応援にきたらしいキャラバンの団員等だった。

2012/11/25
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