カトレア
85 カモミールの花輪
――それからイプシロンの反撃が始まった。ジェミニストームとは違うプレーにアタシ達は……正確にはメンバー達は翻弄され、全く歯が立たなかった。アタシはというとあれから完璧にマークをされ、ボールに触れる所かまともに動く事さえ出来なかった。 アタシが動けなくなっている間に先制点を奪われ、次々と相手は点を取っていく。それと同時に傷付いて行くメンバー達の姿に自身の情けなさと歯がゆさで、アタシは強く拳を握りしめた。 「……それで良いのです、貴方様はもっと“力”を求めなくてはいけません」 舌打ちをするアタシにマークに入っていた相手チームのメンバー(確かメトロンと名乗っていた)は微笑を浮かべ、穏やかに口を開く。その様子にアタシは苛立ちを覚え、睨みつけた。 「……あんた、何言ってんの?意味分かんないんだけど」 アタシの態度にメトロンと他のメンバーは顔を見合わせ、楽しそうに笑う。貴方様は全く変わりませんね。と口々に懐かしそうに言われ、何だか不思議な気持ちになって、よく分からなくなってしまった。(……何だろう、この懐かしい感じ) 心の底にあるモヤモヤとした不透明な部分にアタシは不快感を覚えているとそこで3分が経過し、(アタシだけが無傷のままで)試合が終了してしまった。 *** 「いい加減、機嫌を直したらどうだ?」 漫遊寺を出発し、数時間。小暮がキャラバンに秘かに乗り込んでいた事も合って少し前まで騒がしかったキャラバン内も漸く静かになった所で不意に隣に座っていた鬼道君に話しかけられた。 彼の声は若干苦笑が入っていて、その声にアタシが少し顔を顰めると、鬼道君は面白そうに笑う。(もー、酷いなっ) 「……だって初めて入った小暮だってあんな凄いディフェンスしてみせたのに、アタシなんかまともに試合に参加すら出来なかったんだよ……?」 ……試合が終わってあれからメンバー達に謝ったのだが、皆快く許してくれた。(というか、寧ろ皆から慰められた) でも皆の優しさに甘えるのも、何だか自分が許せなくて、さっきから黙っていればこんな風に鬼道君から話しかけられた。 心配してくれている彼に悪いなと思って素直に話せば、鬼道君は呆れたように溜息をついてアタシの顔を見た。 「あの人数にマークされたら、普通は抜け出せないだろ。あれは飛鳥のせいでは無い。気にするな」 まぁ、そう言ってもお前は気にするだろうがな。と溜息交じりでそう言われ、思わずアタシも苦笑してしまった。 (図星過ぎて、鬼道君が怖いわ) ――― 何か微妙な感じで終わっちゃった;; 2009/11/21 |
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