イナズマ | ナノ

カトレア

86 悪戯への制裁




「影山が脱走し、愛媛に“真・帝国学園”を設立した……?」

 稲妻町へ戻る為にキャラバンを走らせている最中、瞳子監督の携帯に送られてきた響木監督からの情報。その内容に(アタシを含む)一部のメンバーが息を飲んだ。
 ……影山について知らないメンバー達に彼が今までした事を話せば、皆が顔を歪める。その事態にキャプテンである守が、止めに行こうと提案した。勿論それに異議を唱える者はいなく、直ぐに愛媛へ向かう事になる。

「うわぁぁぁぁっ!!」

 重い空気になったキャラバン内に壁山の叫び声が響いた。皆が壁山の方へ視線を向ければ、彼の顔中に書かれた悪戯書き。まだ少しなら可哀想に思えるがここまで盛大に書かれると、かえって面白く思えてきてドッと笑い声が上がった。
 皆の反応に犯人である小暮は、得意げに笑って見せびらかす様に立ちあがると前に走って行く。その様子に小暮の保護者(?)である春奈ちゃんが立ち上がり彼を叱り飛ばすと、小暮も素直に元の席に戻って行った。

「なんかお姉さんみたいだね」

 ふふっと隣に座っていた吹雪君が笑ったのでそうだねー。と笑ってアタシも頷いた。

「寧ろお姉さんって言うより、お母さんみたいな感じ?」
「13歳で既に母親って、どんなだよ」

 アタシがそう言えば隣に居た染岡が呆れた様に口を開く。(つまりアタシはFW2人に挟まれて座っているのだ)彼の突っ込みにアタシと吹雪君が笑えば、染岡も満更では無さそうに笑った。
 そこで大きなその……口には出せない様な音が春奈ちゃんの席から聞え、キャラバン内が一気に静まり返った。真っ赤になった春奈ちゃんはブーブークッションを片手に持ち、ヒステリック気味に小暮へ叫ぶ。(……女の子にこれは駄目だよ)
 アタシは溜息を付くとシートベルトを外して椅子に膝を付く様な感じで後ろへ向くと、小暮へとニッコリ笑いかけた。

「女の子にそれは無いと思うよ……小暮“君”?それにさっきも皆に悪戯してたけど……、どういうつもりかな?」

 人の大切な物を悪戯したりして、弁償できるの?靴紐を結んでもし怪我したりしたらどうするのかな?と若干低めの声で呟き、ガシッと上から押さえつけよ様な形で小暮の頭を掴めば、泣きそうな顔でアタシを見てきた。(この位しないとね、こういう子は分からないんだから)

「アタシが言いたい事、分かったかな……?」

 もう一度確認する意味で笑いかければ、それはもう物凄い勢いで首を縦に振って来るので、アタシは手を離すと自分の席に戻った。
 ふと視線を感じ、前を見れば鬼道君が此方を見て小さく笑って来たのでアタシも笑みを返し、小さく親指を立てた。


―――
シスコン万歳\(^^)/笑

2009/11/23


prev目次next