幼馴染とキセキで異種族パロ
個人的に書きたい異種族パロのネタ。
サイトで書くのは微妙なのでこちらに。
***
「坊ちゃま、涼太坊ちゃま!」
息を切らせ慌てた声色で主の名前を呼ぶ少女の声が庭園に響き、その声に庭師や使用人たちはまた始まったのかと微笑ましそうに走り回る少女――玲の後姿を見送った。
――美しい花や木々に囲まれた庭園はとても一日では回りきれない程の大きさを誇っており、それはこの国でも有名な名所となっている。一度でいいからあの邸宅の庭園に招かれてみたい、それが貴族や民衆の中で囁かれているくらいだ。
それだけでこの庭園の所有者が多くの富と権力を持っていること誇示し、認めれている証だということが分かる。それは敬愛し使用人として仕える身としてはこの上ないことだ。が、“かくれんぼ”をするとなると話は変ってくる。
色とりどりの花々も眺める分には美しいものだがいざ人探しとなれば只の邪魔な障害物でしかない。周囲を見渡し足を止めた玲は小さく溜息をつく。嗚呼、早くしないと旦那様たちにご迷惑を掛けてしまう。逸る気持ちを押さえ、重たいメイド服をたくし上げると悪戯好きの主の名前を呼び歩き始めた。
「涼太坊ちゃま、いい加減出てきてくださいまし!もうピアノの先生がいらっしゃっています。このままでは旦那様や奥様にまた叱られてしまいますよ……!!」
玲の焦った声を聞きながら近くの木の陰に隠れて居た少年、涼太は満足げにしたり顔で彼女の姿をこっそりと見つめ小さく笑った。今日は見つからないぞ、そう言わんばかりの雰囲気だ。
「そもそも、玲が悪いんじゃないッスか……!!」
むっと頬を膨らませ呟いた涼太の言葉に背後からどうしてですか?と静かな声が掛けられる。肩を揺らし逃げ出そうと足を踏み出した彼の小さな体を抱きしめる様に華奢な手がまえた。
最初は抗おうと暴れる涼太だったが観念したのか大人しくなったことに玲も胸を撫で下ろし、手を放し立ち上がると眉を寄せ少しだけ怒った口調で彼を窘める。
「やーっと捕まえましたよ、坊ちゃま!さあ、ピアノのお稽古をしましょう」
そう言って案内するように数歩前を歩いていた彼女だったが、後ろから着いてくるであろう足音が聞こえないことに思わず振り向けば涙を瞳一杯に溜め、我慢するように自身の服の裾を握りしめる涼太の姿があった。
「ぼ、坊ちゃま……?」
心配げに近寄った玲に走り寄り、抱き着く小さな主の姿に困惑しながらも、優しく頭を撫で目線を合わせるように膝を折れば今度は彼女の首に抱き着くと声を上げて泣き始めてしまう。
「玲、この前一緒に遊ぶって約束したのに……っ」
嗚咽交じりに訴えてくる声にあやすように背中を軽く叩いていた玲もギクリ、と肩を震わせた。……そういえばこの前、お休み前に本を読んで差し上げた時にした気がする。走馬灯の様に思い出された記憶に彼女もやってしまった、と顔を青くなってた。
「坊ちゃま……申し訳ありません、全てこの玲めのせいです。普段から約束事は守ること、そう言っていた私が貴方さまとの約束を破ってしまうなんて……私は坊ちゃまのお世話役失格ですね……」
思わず涙声になる玲に今度は涼太が吃驚とした様子で、そんなことないッス!!と首を振る。目を真っ赤に腫らしてしまっていたが涙はもう止まったらしい。
「玲は一番のお世話役ッス!だって一番玲が好きだもん!!」
そう言って涙を拭い彼女の手を握るとグイグイと引っ張りながら屋敷の方へと歩き出した彼の姿に玲も目を丸くしてしまう。どうしたんですか、と思わず尋ねる彼女に涼太はこれで本当に玲が自分のお世話役から外されてしまったら嫌だからピアノの稽古をする、と力強い口調で答えた。
「でも、これが終わったら一緒に遊ぶんッスからね!ピアノの稽古も見てないとダメ!」
頬を赤くしながら言ってくる主の姿に思わず頬が緩み彼女も握ってくるその小さな手を握り返しはい、と嬉しそうに笑った。
―――
こんな感じで書いてきたのは良いんですけど異種族とかいっておいて全くその要素零な部分しか書いていないのでいまいち分からないと思う(というか私も分からん)ので簡単に設定を書いておきます。
*玲さん
貴族である黄瀬家(多分伯爵とかその辺り)のメイドさん。怪我をして瀕死の状態だったところを現当主(涼太くんのお父さん)に拾って貰いなんやかんやで涼太くんを生まれた頃から見守りお世話役をしている。
実際の所は人間と人魚のハーフだったが、数世紀前に美しい容姿をしている人魚を捕えるべく“狩り”がなされた頃に大怪我をしてしまいそこでヴァンパイアの赤司くんに救われ結果的に彼女もヴァンパイアになってしまいます。だから人間+人魚+ヴァンパイアの超混血。
色々あって彼の元から逃げ出し黄瀬家に転がり込んできたが赤司くんは未だに玲さんに執着しているらしい。本音を言うと迎えに来た赤司くん、そして彼に従属しているキセキと派手に喧嘩するところが書きたいだけだったりする。
拾ってくれた恩のある黄瀬家がとても大切で、次期当主である涼太が命よりも大切。
*涼太くん
黄瀬家の一人息子で次期当主。普通の人間。
物心つくころからお世話役をしてくれている玲さんが大好き。長寿なので姿の変わらない彼女を不思議に思っているが、世界観的に異種族が普通に沢山いるしお屋敷にも使用人として何人もいるので何とも思っていない感じ。でも彼女がなんの種族とかは知らない。
大きくなったら玲さんと結婚したいとか夢見ているお年頃。ずっと一緒にいることが当たり前だと思っているので、大きくなって原作と同じ年代になって赤司くんたちキセキにあって彼女を取られそうになったり、自分だけ人間でモヤモヤする彼を書きたい。うん。
*赤司くん
ヴァンパイアの超偉い人。つか多分この世界の種族トップだと思う。
玲さんにやけに固執してて、逃げた時も敢えて見逃して黄瀬家にいる彼女のこともこっそり見ていたり。涼太くんが大きくなってきて雲行きが怪しくなってきたので迎えにいきました。
後は長いんで省略。気が向いたら書きます。
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3rd.Nov.2013
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