幼馴染と黄瀬君の小学生時代
連載の第一章の空白の2年間のエピソード
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……どうしてこうなったのだろう、そればかりここ最近言っている気がする。
記憶を取り戻して早2月が経過したが未だに私はモヤモヤと気持ちのまま2度目の小学生生活を過ごしていた。うーん、この気持なんて言ってたらいいのだろうか。なんかこう、いきなり自分が異国の世界来てしまったような感覚というのだろうか。言葉が通じるし日本の行事など自分が認知している事柄などがある分有難いと言えば有難いのだけれど、それが余計にややこしくしているというか……。
自分が認知している日本という“世界”との些細な違いにもとてつもない違和感を感じるし、自分自身が何だかこの世界から切り離された様な“異物感”を感じてしまうことが何よりも辛い。記憶があるだけでどうしてこんなにも不自由な思いをするのだろう、と思わず頭が痛くなってしまう。ここ最近こう言ったギャップにストレスを感じているのか偏頭痛がひどいのだ。
先生の話も聞かずに思わず寄せてしまう眉間の皺の間を揉み解すように手で押さえていると、ふと目の前に見慣れた金色の髪が視界に入ってくる。徐に視線を前に戻せば、キラキラと向日葵みたいな笑顔をした幼馴染の顔があった。
「玲、委員会一緒のにしようッス!」
思っていたよりも近い位置にあった顔に面食らい思考が停止していたせいで涼太の言葉を理解するまで数秒掛かってしまった。……委員会?なんて呟けば「先生の話は聞かないといけないんスよー」とか茶化しながら前の黒板を指してくるので見れば委員会決めとでかでか書かれている。どうやらこの時間は委員会決めの為の時間だったらしい。やば、全く聞いていなかった。
「良い……やっぱやだ」
「ええ、なんで?!」
ガーン、と効果音が付きそうなほどショックを受けた様な顔をする涼太に私は小さく溜息をつく。――記憶が戻ってストレスに感じ始めたことがもう一つある。それは彼、涼太のことだ。
彼の容姿を見れば何となく想像は出来ると思うが……そうクラスや他学年の女子からやっかみを受けるようになったのだ。小学4年生といえばそろそろ恋やらなんやらに関心を持ち始めるお年頃。素直で優しい(と私は思っている)涼太がその対象になることは至極当然のことだろう。
こまめに話しかける仲良し女子グループや遊びのお誘いを掛ける子は最早日常茶飯事なので慣れたが、少女マンガでもみたのかラブレターを送る子までいるくらいだ。流石に私もこれには驚いた。
最初はすげー、というぐらいにしか思わなかったが当の涼太はというとそんな子達に目もくれず未だに私の跡をちょこちょこ付いているせいで女子グループに私が標的となってしまった訳だ。……さっきも言った通り疎外感を感じている今、今までの様に皆と同じ様に関わることが出来なくなっているせいで只でさえ孤立気味になっているのにこれ以上問題を抱えたくないのが本音だ。
精神年齢があれだけに小学生レベルの虐めとかには私は別に平気なのだが、教師を通して両親に心配を掛けさせたくはない。ここ最近体調が悪い日が続き不安に思っているだろうからこれ以上不要な思いをさせたくなかったのだ。
……だから私は今、涼太のことが苦手だった。
―――
連載の第一章の空白の2年間のエピソードです。
この時の玲さんははっきり言って黄瀬くんのことが苦手であまり関わりたくない感じです。
連載の玲さんは少し達観したような感じで大人びたイメージで書いているのですが、彼女もごく普通の女の子なのでナーバスになったりもします。そういう弱いところも書けて満足です。
これが連載の様に戻るまでにどうやって元に戻ったのか、考えると楽しいですね(笑)
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3rd.Nov.2013
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