小説家 | ナノ


5その後

一週間後。
今日も夕食を共にした二人は、ゆったり晩酌に興じていた。晴市はコップに注がれたビールを片手に、隣でテレビに夢中な彼女を横目で見つめる。マナはテーブルの上に豊富に並んだ酒のつまみを、茶をあてにむしゃむしゃ食べていた。

「や、ほんと、冷静に考えて何で君が俺を好きになったのかわかんないのよ」
「そうですか?先生の好きなところ、私たくさん言えますけど!」
「ええ?例えば?」
「優しいところとか、よく気がつくところとか。すごく大人です!それにカッコイイ顔とか。目とか。声とか。笑顔がクシャってなるところとか。私が帰るって言ったら口では平気そうなのに顔はめちゃくちゃ寂しそうにするところとか。それからそれから……」
「ああ熱くなってきた。わざと辱めてるでしょ?俺を」
「いえいえ全部ほんとですよ!他にもいっぱいあります。あれとかそれとかああいうのとか……」
「わかったからそれは今度に聞かせて……っていうか。君すごく俺のこと好きね……!?」
「好きです。大好き!です!」
「……おかしい。やっぱり俺、死んじゃうんじゃないかなあ。突然理想通りのいい子が空から降ってくるなんて」
「えっ。あはは、嬉しいです、ふふふ」
「あらあら、可愛いねえ照れてるの?そうなるともっと喜ばせたくなるなあ」
「じゃあ。先生、キスしましょう!私すごく喜びますよ」
「……んー。……うん。じゃあほらこっち向いて」

ちゅ、と軽いキスをしたらビールをあおる晴市。しかし不満げなマナだ、じとっと彼の顔を見た。

「なあに。もっとしたいの?」
「……はい。したいですけど……」
「……仕方ないなあ、もっかいね……」

もう一度、さっきと同様のキスだ。
だけどマナは全然満たされなくて、やきもきした。せっかく恋人同士という運びになったのに、スキンシップは一週間経ってもライトなキスだけで。もっともっとくっつきたいのだが晴市はどうも乗り気じゃないようだ。

「(なんか、私ばっかり、好きかも……)」
「……どしたの?暗い顔して」
「いえ、なんでもないです(彼女になれただけですごく幸せなのに求めすぎなのかな?でも……)」

でもしてほしいなら言わなきゃ伝わらない、と思い立ったマナだ。あれこれ考えるより、やってみるのが性に合ってる。晴市の腕をぎゅっと掴んだ。

「おっと、急に抱きつくからびっくりしたじゃないの」
「先生!私もっとキスしたいです!」
「え。あー……、君、キス好きねえ?」
「晴市さんとするからキスが好きなんです……」
「あ……っと、ちょっと、待ってね。ときめいちゃったから。平常心取り戻すの、時間かかりそうなの……」
「取り戻さなくて良いです!」
「って、わ……っ!お、おねーちゃん、こら!」

首に回した腕を力任せにぎゅううっと抱きつかれ、晴市は慌てて彼女を引き剥がした。まったく、とため息をついて。

「そこまで言うなら、ちょっと凄いのしてみる?」
「はい!」
「良い笑顔ねえ。無邪気で羨ましいったら。……お口開けてごらん」
「はい!」

マナの返事からは嬉しさが漏れ出ている。臆面ないその姿に苦笑いを浮かべた晴市が、ゆっくりと彼女の唇を覆った。
ゆっくりと慎重に舌を侵入させて、でもしっかりとべったり触る。かすかに音を立てながら深く口づけて、やがてどんどんいやらしい音が大きくなる。そうしてやっと離すとマナの顔がぽーっと朱色に染まっていた。

「……どう?満足した?」
「いいえ、もっとしたい……です!」
「っ!わっ……〜〜!!ん……!?」

ちゅうう、と今度はマナからキスをする。抱きつきながら、まさに彼を押し倒す勢いだ。情熱的すぎて体を支える腕のつっかえがもたない!
晴市がするよりワンランク深いキスに力が入らなくなる!

「……っぷは!は……、はあ、……驚いた。き、君、キス上手いのね……こ、腰抜けるかと思ったじゃない」
「ごめんなさい。でも、もう少し、ちゅー……」
「んぁ……っはあ、ちょっと。あんねえ、……そんないっぱい、されちゃうと、その……」
「はい……なんですか……んー……」
「っや、……ん〜……お、俺、やらしい気持ちになっちゃうよ」
「はい……どうぞ、……はぅ、はぁ……」
「え。あれれ?いいの……?」
「先生はしたくない……ですか?」

ようやくキスをやめて、晴市に向き合った。彼は渋い顔を崩さないで、煮え切らない態度だ。

「んー。したくないわけじゃあ、ないけどね、でもねえ」
「でも?」
「君があまりに見目麗しい少女だから気負っちゃうというか。いけないことしてる罪悪感っての?さいなまれるわけなの」
「そんなの!さいなまされなくていいですよ!私とっくに少女の歳じゃないです」
「俺からしたら少女とそう変わんないの!知り合いとか芸能人とか、俺たちくらいの歳の差カップルってたくさんいるけどいざ自分がってなるといいのかなあって」
「私は全然気にならないですが」
「そ、そりゃ、君はいいかもだけど。上の立場としちゃ、あ、あっ、あんまりくっつかないで。ドキドキしちゃうから」

晴市の発言を遮るように抱きしめる。晴市はおどおどあたふた両手を宙に浮かせたが、やがてマナの背中に落ち着いた。

「かまいません!ドキドキしてください!」
「えええ……。君ほんとわかってないでしょ、俺結構、我慢してるのに」
「我慢なんて必要ないです!」
「ええええ……。こんなに誘っといて途中でやっぱだめは無しよ」
「言いません!」
「じゃあ、いや、でも、うーん。あっこれ、もしかして据え膳ってやつ?」

今俺男らしくないかもね、と思案の末、腹が決まった様子の晴市だ。でもまだちょっと気後れが表情に見え隠れしている。
すっかり下がった眉、だが半目の瞳の奥を光らせて。

「やたらギラギラしてても引かないでよ?」
「はい!たぶん」
「たぶんなの?」

マナのご機嫌を伺うように瞳を見つめるが彼女はにこにこ笑顔になってしまう。性的とはかけ離れた姿にやっぱりため息をついたら。
マナの腰に当ててた手のひらにグッと力を入れて、自分の体と隙間なく抱き寄せた。

「わっ……!?」
「オトナをからかっちゃだめなんだから。君も覚悟するんだよ」
「きゃ、……ぁ……っん……!」

妙に低い声に驚いたのもつかの間、唇を奪われてマナはうっかり甘い声が出る。存外本気のキスに体が汗ばんで熱い。

「んっ、ふぅ、はぁ、ゃ……っせんせ」
「まー。くたくたになっちゃって。可愛くてたまらないねえ」
「ひゃ、……ぁん、……んんっ、ふぁ、あ、あの」

アダルトなキスにびっくりしたのか、マナの両手が晴市の服を引っ張る。

「おやおや。君がしたいって言ったんじゃないの。もう降参?」
「ふぇ……、はぁ、はう……。違います、逆です」
「へ?……っあ、こら、……んんっ、また……きみ、」

目が座ってる、と気がついたがもう遅い。もっといやらしいキスがしたくて、マナが彼に口付けた。

「っんふ、ぁ…っはん……んちゅ」
「は……んぅ、あ……っん、……こら、激しすぎじゃない?女の子からそんなされたら俺のぼせちゃって使いもんにならなくなるよ」
「だ、だって。晴市さんのキス、凄いので……私も頑張らないと、と。……すみません、駄目でしたか?」
「や。嬉しいけどね。……キスなんてひっさしぶりだから、おじさまとしては動悸がしちゃうわけ……」
「どれどれ。キスいつぶりですか?」
「聞かなくていーの!どっちもね!」
「知りたいです!先生のことならなんだって!」
「もうやだなあ……。でもえっと、向こう三年?いや六年かも……?家政婦のドラマが流行ったのってなん年前だったっけ。その年よりは前だったような」
「とにかくすごく前なんですね」
「……俺、結構へこみやすいの。わかってる?」
「ふふふっ」
「とにかくお手柔らかに頼むよ」

にやにや笑われて面白くない晴市がぼやく。主導権を取り戻すべく、腰に回していた手で服の上から肌をゆっくり撫で出した。

「……前から思ってたんだけど。よく君の着てるこのニットえっちすぎない?よそでもこの服着ちゃうのはちょっと控えて欲しいなあ……あ、これって束縛になる?」
「いいですよ、晴市さんが嫌ならこれからは着ませんね」
「いいの?あっでも待って。うちに来る時だけは着て来てもいいからね……って、これはなんだかセクハラっぽい?」
「気にしすぎですよ。にしても滝川センパイの言う通りですね」
「なにがなの」
「先生が好きならニットのセーターを着ていけと。理由は教えてくれませんでしたが、そういうことだったんですね」
「あいつこそセクハラじゃないの!絶対自分が見たいからそう言ったのよそれ!……いいかなマナちゃん。簡単にやつの言うこと間に受けちゃダメだからね」
「ふふふ、はい。でもお陰で先生が私を好きになってくれました」
「エロいニット着てこなくたって君のこと好きになったに決まってるでしょ。気になったのは確かだけども」

なんて会話の合間にも、ひっそりと服の中、背の方に侵入した晴市の手が下着のホックを外す。たくし上げたら手を抜いて、またセーターの上から体を触る。今度は胸の方に手のひらが伸びた。形をなぞるように包み込む。

「んぁ……っはあ、……」
「キスでだいぶ感じたみたいね。こことか……」
「きゃ、……っあん、……はい……」
「すごくやらしいもの」

胸の先端を服の上から親指で押し込まれて、伏し目の瞳が潤む。熱い吐息が漏れ出たり、熱くなった肌から彼女の興奮を感じ取れて晴市は思わず唾を飲み込んでしまった。

「(実際触ってみると思ってたよりずっと大きいのね)」
「んっ!ゃ……っはあ……ん」
「(指がどこまでも沈む感じ。すごく感じるみたいだし)」
「ひゃ、ん……あっ、や……あ」
「(これを独り占めしてるなんて贅沢すぎじゃないの)」
「は、ぅ。ぁ……んんっ、ふう、はあ……。晴市せんせ、チューして欲しいです」
「はいはい、いいですよっと。もっと近くにおいで」
「あ……。もしかして呆れてますか?私、欲望のまま甘えすぎかも……」
「いえいえ。君らしくていいんじゃない?それにここまできたら今日はもうなんでも君のお願いごと聞いちゃうから」
「やった!もっともっと、ちゅーしましょう!」
「まー積極的。カワイイけど」

んちゅ、くちゅ、淫らな音を伴いながら唇を求め合う。キスしながら胸を触る手がどんどんいやらしく色を帯びて、マナの腰が動いてしまう。気がついた晴市が浅く笑って、しかしそれもキスに掻き消された。

「ん〜。はあ。君ってどこもかしこもやらかいのね……唇も、舌も、胸もおしりもね」
「先生はどこもたくましいです」
「あらそう?ふっふっふ、ジム通いの成果が出てるのかしら」
「さわさわさわ……」
「うおっ。おねーちゃんってわりとおじさんみたいなことするよねえ」
「えっ!あはは!」
「あははって、あ、……っあのね……きみ……っ……」
「さわさわ……」
「ん……、まあ、いいか。好きなだけさわんなさい」
「じゃあ遠慮なく。さわさわ……」
「ぁ……はあ。我慢比べになりそうね」

いろんなところをさわさわされてなんとも言えない気持ちになるらしい。晴市はされるがままに身を委ねているが、いたずらな手は胸や腹、二の腕や下腹部までさわさわしてくる。
油断してびくんと反応を見せたら思うつぼだ。上等なスラックスの中で窮屈そうなそれを服の上からなぞられた。

「や……っはあ、……んん、……おねーちゃん、なんか楽しそうね」
「はい、楽しいです。せんせ、気持ちいいですか?」
「ウン……そりゃ、……っあ、……イイけど……ッ!きみ、俺が喋ってる時狙って……強くしてるでしょ」
「えへへ」
「えへへじゃなくて。……っは……ぁ、ああっ。……いよいよ……苦しくなってきた。出してもらっていい?」
「!は、はい。じゃあ」

ベルトを外して前のジッパーを下げる。ボクサータイプの下着の中大きくなっているそれをゆっくり優しく露出させた。

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