出来のいい弟 | ナノ


AFTER―3 a



とある質問を投げかけられて、少年は間髪入れず答えた。

「もちろん、俺は姉ちゃんと結婚する!」

隣の少女を抱きしめて笑う子どもを大人達は微笑ましく見つめた。少年があまりに無邪気に言い切ったからだ。
大人の中の一人が、少女に問いかける。

「お姉ちゃんは大きくなったら何になるの?」
「私?私はねぇーー」

ちょっとの間の後、少女はとびきりの笑顔でこう言った。

「お嫁さん!」

かっこいい人と結婚して、子どもを産んで、幸せに過ごすんだ。お父さんとお母さんみたいに。
ーー彼女は一息にそこまで言って笑った。

居間にずらりと並んだ親戚の誰かが、思い馳せるように口に出した。

「あと10年経ったら二人はなんて言ってるだろうなぁ」



▽出来の良い弟。after3



ーブチンッ!
いきなりテレビを消されて、お母さんがびっくりして廉を見た。

「…あぁ、ごめん、急に消して。でもこんなの見てたらさ、終わるのも終わらないだろ」
「確かにね。結佳、あんたは自分の部屋だけでも良いから片ずけなさいよ」
「はぁい。ていうかお母さんが見てけって言ったんじゃん…」

急に思い立って始めた大掃除で、昔やたら撮りたくったホームビデオを見つけたお母さんがお茶を取りに来ていた私を呼び止めたのだ。
何本か再生して、さっきのビデオに辿り着いた。ラベルを見ると丁度10年前の今頃が記されてる。
ゴミ出しから戻ってきた廉がなぜ消したかはわからないが、昔の話を嫌う奴だから思うところがあったのだろう。ましてや自分が姉と結婚するだなんて本気で言っていたのだから。
今と違って昔の廉は、純粋で無垢な本物の子どもだった。

「後でさ、父さん帰ってきてから見た方がいいよ」
「それもそうね。あぁ、廉、こっちの棚の上もお願い」

あくせく働く廉。
私は居間を後にして自室に戻った。今までこういう時ろくに手伝わなかったせいで、お母さんは私の協力を諦めているようだった。

「お嫁さん、か…」

私はさっきのビデオの中の、自分の言葉を反芻する。
幸せな結婚、家庭…今や灰色に見える。ちょっと前まで私は、将来大恋愛をして素敵な男性と結婚するのだと信じて疑わなかった。

けれど、廉に体の隅々まで暴かれた今。
私はそんな妄想さえ上手く出来なくなっていた。




「勉強会、しに来たけど」

夜、廉が口実をわざわざ口に出して私の部屋に入る。
手にはお菓子とジュースを持っている。おそらくお母さんから持たされたものだ。それから飾りだけの、参考書。

「部屋片付いてねえじゃん」
「片付いたよ。ちょっとは」
「ちょっとってレベルじゃねぇんだけど。誤差の範囲だろ、これ」

廉は机に手荷物を置いて、珍しく座布団に腰を下ろした。
私とテーブルを挟んで向かい合っている。いつもならすぐ求められるのに、今日はお菓子に手を伸ばした。

「将来の夢がお嫁さんか。随分可愛い子どもだったな、姉ちゃんは」

廉の言葉尻は皮肉っぽくて、今と昔を照らし合わせて私を煽っている。

「廉だって、お姉ちゃんと結婚するってやっぱり言ってたじゃん。言ってないだとか忘れただとかいつも言うくせに」
「そんなん嘘に決まってんだろ。忘れるわけない」
「…な……」
「で。姉ちゃんの今の夢は何なわけ?」

ちょっと眉間に皺を寄せて、なじるような表情で私を見た。無計画な私をまた責めるつもりなのだろう。

「急に何…」
「ほら、ビデオで最後言ってただろ。10年後なんて言ってるかなってさ。姉ちゃんはまだお嫁さんなわけ」
「…違うよ。それこそ、忘れてた」
「ふぅん…」

廉が興味なさそうにシュークリームの袋を開ける。

「姉ちゃんも食べれば。ふたつあるし。生菓子だし」
「…私は」
「ヤル前は食べたくないとか?」
「(今からの事を思うと、食欲湧くわけないよ…)」

俯く私を見て廉は軽く息をつく。自分の指についたクリームを煩わしそうに舐めようとした。が、やめて、私の前に差し出す。

「舐めろよ」
「はぁ?何で私が、」
「舐めろって言ってんだよ、言う事聞けって」

睨まれて、仕方なく顔を近づけた。

ーちゅ…ッ

クリームを綺麗に舐めとる。

「も、もういいでしょ」
「駄目だ」
「え?」
「今度は俺の指を舐めろ」

抗議の視線を向けるも、廉はまるで無表情だ。それどころか奴の指が私の唇に触れてなぞる。

「ほら…しろよ」
「…っ……わかった…」

右手で廉の指を支えて、ちゅぱ、とどうしても音を立てながら吸ってやる。

「ん…、もういいわ」
「ーーっはぁ、…」
「指ふやけるし」

二つともシュークリームを食べきった廉が立ち上がって私のそばに寄った。腕を引っ張られて引きずられたかと思うと起こされて、そのままベッドになだれこまされる。

投げ出されて呻いた私の上に覆いかぶさって、廉がキスしてきた。

「…んんっ!ん、……っ廉…!」
「…っは、…どう?甘い?」
「……甘い…」

私の返事に薄く笑って、もっと深いキスを求められる。
唇を離した時の、奴の吐息が熱い。
目も座って、…感じた顔をしている。それは多分私もだ。

一階に居る親を急に思い出して、そんな自分達が心底嫌になった。

「余計な事、考えただろ」
「え?」
「表情が曇った。姉ちゃん分かりやすいからすぐバレるよ。俺と居るのに他ごと考えるとか、どういうつもりだよ」
「ご、ごめん、」
「そんな余裕、無くしてやるよ」

シャツの下に入り込んだ手が中をまさぐる。下着を取られて、重力に従って形を変えた胸を触られた。廉は私の顔の横に肘を落として、おでこにキスをする。せわしくも優しい手つきが私を惑わした。

「んぅ……っ」
「あ。姉ちゃん、こう触られんの好きだろ」
「ひゃあ、…あっ、廉、しつこい、よ…」
「ん?でも良いんじゃねぇの」
「……っ」

ゆっくり指で先端の側面を弄られる。なんだかそれが下半身にまでじんわりと快感を広がらせる。円を描くように動かされたら、もっとだ。

「はぁ、…はぅ……はぁ…」
「姉ちゃんは舐められるのと吸われるの、どっちがいい?」

廉がわざと耳元で囁いた。こそこそ話のような密やかさだ。
答えろよ、と付け加えて、耳に唇を付ける。

「なんでもいい…」
「嘘だ。なんでもってことはないだろ…、言えよ。好きな方をさ」
「じゃあ、す、…吸って欲しい」
「わかった」

ちゅ、と耳にキスしてから、シャツを捲った。私の望み通り吸われると背中を反らせてしまう。声を我慢するのに精一杯になって、自分の指を噛んだ。

「そんな良いのかよ。淫乱ってこういう女のこと言うんだろうな」
「酷いよ…」
「酷くない。事実だし。…指、噛むのやめろって…跡になんだろ」
「…っはぁ、…うん、わかってる…」
「わかってないじゃん」

声出すのが嫌なら、ずっとキスしてやるよ。ーー廉がそう言って私に口付けて、手は下に伸びる。
ズボンをずらされて、下着の上から秘部を引っ掻く。

「んっ!…む、ぅ、…はぁ」
「姉ちゃーん…ここ、すげえよ」
「廉、が触るから、」
「俺の指、好き?」
「…っ」

キスの合間に話しかけられて、答えようにも塞がれる。いつの間にかナカまで入り込んだ奴の指が好き勝手動いてる。

「ぁ、あっ….はぁっ、だ、だめ…」
「駄目って言うな」
「で、も……んんっ!ゃ、ぁっ!」
「嫌も禁止…」
「廉、」
「俺の名前、呼ぶなって前言っただろ」
「ひゃ、あっ…ん、ん、ぅ、んっ」
「そうそう…、可愛い声だけ、聞かせろよ…」

廉の指がナカに入ってくる!
私は声を抑えるのに必死になる。その光景が滑稽に見えたのか、廉が笑った。

「は…、もうナカ、欲しそうだ」
「…ん、、むぅ、…っは、……」
「はぁ……姉ちゃん…」
「んく、う、…ぁっ、ん、ぅ」
「…馬鹿みたいに感じてるの、わかってる?」

涙でぐにゃりと視界が歪む。
甘ったるい快楽に飲まれて、私はもっと、と体を押し付けてしまう。
悔しいのか、嫌なのか、怖いのか、許せないのか…どの感情が涙腺を刺激したのかもはやわからない。
身体中暑くて、ぽかぽかしてしまって、廉なんて忘れて良くなりたくなる。

「…あれ。ゴムどこ」
「ふ、袋の中…」


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