セクサロイド | ナノ


セクサロイド3-1

 

「あの。お嬢様!」
「ん…何?ごめん今忙しくて」
「あ、そうですか、そうですよね!じゃあ後で…」
「…?」


ロイドが食器を拭きながらなにか言いたげにこちらを見てくる。
そわそわ落ち着きないその様子はかなり煩わしい。


「お嬢様」
「はいはい」
「あの…それ、書類ですか?奨学金の」
「そうだよ」
「記入ですか」
「え、どうしたの?用事?何か大事なこと?」
「いえ…」うろうろ
「?」


ロイドはまた恭しくキッチンに戻る。
その間も私をチラチラ見るのでかなり気になる。


「おじょ「何?」」
「いえ、忙しいのならいいのです!そろそろ昼食の準備をしますね!」
「あそう…お願いね」
「…」
「…」
「…」チラッチラッ
「(いらいらする…)」



*セックスアンドザロイド 3



「お嬢様昨日は大学説明会お疲れ様でした」
「うん、疲れた」
「昨日帰ってくるなり倒れるように眠ってしまわれたので…心配しておりました。もうお体の方は」
「大丈夫。ありがと」
「それなら安心です」


にっこりと笑う白髪碧眼のこのロボット…彼がうちにやって来てついに四日目となる。
セクサロイドという事実からさえ目を瞑ればかなり良い仕事をしてくれているだろう。それがなにか今日になってからこちらを落ち着きなく伺ってくる。


「ところでお嬢様、なにかお忘れじゃないでしょうか」
「おわすれ?」
「はい、大事な、大事なことでございます」
「えー…?」


それに私は心当たりがあった。
だからうざったくこっちを見てきていたのか…と、その理由がわかって急に憂鬱になった。
それはつまり……。


「いや、何も忘れてない」
「お嬢様わかってますね?」
「何のことかなぁ〜」
「酷いお人だ。お嬢様の自主性は乏しいようですね、改善しないと。とにかく、昼間からで申し訳ないですがやることはきちんとやらないといけませんから!」
「なにが?」
「せっくすです!」
「…はぁ……」


このロボットは不良品に近く、人とのセックスでエネルギーを補完するらしい。
普段は週一ほどの頻度なのだが…家に迎えて一週間は1日一回はやらないといけないそうだ。
やんごとなき理由でこのロボットを返品できない私は…正直この仕様に参っていた。


「嫌だ」
「え?なぜでしょうか…」
「当たり前じゃん!前回の暴走でまだ腰がいたいし、違約金と契約がなければ今すぐにでも解約したいという気持ちがかなり濃厚になってるもん」
「そんな…」


しゅんと落ち込む大の男になぜかこっちが悪いような気にさせられる。


「私としてはお嬢様が変なものを買ってくるから暴走したわけで、『俺は悪くねえ、悪いのはお嬢様なんだ』って気持ちがかなり濃厚になってますよ」
「あのね…この間のはそっちの会社のバグが問題なんじゃん」
「ある意味はそうです」
「ある意味ってなんなのまるでこっちも悪いみたいに」
「そういう時もあります」
「ないです、まるでないですから」
「そういう捉え方もありかと思います」
「とにかく!」


ロイドがとりとめのない返事で私を誘導しようとしている。
こうして自分のペースに乘せるのが奴の戦略なのだ!
ほら今も見つめられて動揺が態度に出る。
ここは強気で!いくことにした。


「せっくすはしません!疲れるし」
「しかし…」
「自家発電でもしてなさい」
「お嬢様、恥ずかしがらなくても大丈夫なのですよせっくすは恥ずかしいものではないのですから」
「何言ってんの?」
「…私はちゃんとチャージしないとお嬢様をきちんとサポートできません」
「あのね、私勉強が忙しいからロイドに構ってる時間がないの」
「これから大学生でしょう、こういうお勉強も必要ですよ」
「…だとしても彼氏を作りますから!」
「…お嬢様」
「なに?」
「そんなこといって下はもうびしょ濡れなん「廊下で立ってなさい!」」

命令です、と付け加えるとしぶしぶ廊下へ向かうロイド。
廊下からひょこりと顔を出して、恨めしそうに言った。

「お嬢様…後悔しますよ私を今邪険にしたことを」
「…」
「返事をしてください!」







「(うわもう5時か…)」
ぼんやり本を読んでいたら半日も経っていた。
「(…そういえば、)」
私のなかでふと疑問が起こる。セクサロイドはエネルギーが切れたらどう充電すればいいのだろう。

「ロイドー」

「ロイドー?」

「…?」


廊下に向かってロボットに呼び掛けるが返事がない。


「まさか」


あわてて見に行くと廊下にはぐったりと座り込んでいる男がいた。


「あらら。ロイド、生きてる?」


こくこくと頷くので、まだ作動中なのはわかった。
しゃがんで顔を覗きこむとピカピカと目の奥の光が消えたり光ったりしている。
どうもそろそろ活動限界らしい。


「(まじかよ…)」


とりあえず説明書を持ってきてみた。


「えっと〜…エネルギー切れは…あった。なになに…?」


分厚い辞書のような本をパラパラとめくると直ぐ目当てのページは見つかった。
しかし、そこに書いてあったのは驚くべき内容だった。



『エネルギー切れになった場合』
エネルギーが切れてから一週間以内であれば口淫でシャセイさせてあげれば起動+三時間分のエネルギーがチャージされます。その後せっくすによってエネルギーをフルチャージしてあげてください。…



「は?」



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