セクサロイド | ナノ


セックスアンドザ-シトロン1


昨夜…稀に見る最悪の事件により私は非処女になってしまった。
加害者はロイドという名前のセクサロイドだ。御託を並べて言い訳する最悪の機械だ。

「本当、申し訳ありません、お嬢様」

−こうなってしまった以上、私も処罰は覚悟しております…−
ロイドは私の真正面で三指を突いて、反省のポーズをかれこれ一時間は取ってる。

「とりあえず10時になったらカスタマーセンターに連絡する!お前を突きっ返してやる!」
「なんと…!お嬢様、どうか私にチャンスをください!」
「!?」

急に私の両手を握るので、昨日のこともあって体がこわばる。
顔を上げればロイドの真剣な眼差しが私を貫いた。




◇ セックス アンド ザ シトロン
  (セクサロイド 2)




「とりあえず朝御飯作りましたのでお食べください」
「…いらない」
「せっかく美味しく出来たのに勿体ないですよ」
「うるさい、はげ、へんたい、ばか」

ロイドがため息を付いた。
10時までまだ猶予があるのを味方につけて、ちょっと尊大だ。
部屋の隅で唸る私の側に寄って、目の前にしゃがむ。
壁に背中が付いているので逃げられない私をひと通り眺めて、ロイドがまた笑顔を作った。

私の顎にロイドの指が触れる。そのまま軽く持ち上げられた。

「お嬢様は口の聞き方さえわからない子供でいらっしゃいますね」
「は…?」
「私が教育して差し上げましょう」

一体どういうことだよ!
私に乱暴したロボットに教育すると言われるなんて!
なんだこれ、なにこれ、なんなんだこれ!おかしい。

「お嬢様、あなたは潜在的に持っている素質を解放すべきです!」
「お前は何を言っているんだ?」
「私がお嬢様にこうお話する理由はひとつ…」
「?」
「お嬢様、あなたを好きになってしまいました」
「!?」
「それだけです」

ロイドの表情は至って真面目だ。
私は顔がカッと赤くなる。怒りのせい…だけじゃない。

「な…何、そんな…昨日の今日で…」ドキドキ
「(お嬢様…ちょろい…さすが昨日まで処女…)私たちアンドロイドはマスターのことを愛すようにデフォルトでインプットされています」
「じゃあ」
「ですが、それだけじゃない感情が芽生え始めたのですよ!」
「……」
「私は過去幾多の家でアンドロイドを勤めてきました。ですがお嬢様。あなたと出会って、知らなかった思いが溢れてきたのです。これは愛…ではないでしょうか」

そこまでロイドが話した時、体の鈍い違和感…昨日の出来事で出来た痛みが私に平静を呼び戻した。

「ロイド!都合のいいことばかり言いやがって!その感情こそインプットってやつじゃないのか!騙されない!」
「(おや?キザすぎたでしょうか。いきなり冷静だな)」

睨みつける私をこのロボットは絶対ナメてる!
私の言葉を聞いているのか聞いていないのか…ロイドは言葉を続けた。

「お嬢様、あなたはもっと素敵になれるのです!私に任せればね」
「ごーかんしたロボットがよくそんなこと言えたものだ」
「それは私少し"ドジ"なところがありますし、ね?」ニコ
「首かしげたって可愛くないんだよ」
「とにかく、1ヶ月、私に猶予をください」
「はぁ?」
「1ヶ月で私を好きにして見せます」

随分自信があるらしい、ロイドが余裕たっぷりの笑顔で私を見た。
彼の指が私の頬を撫でて、むにっと引っ張る。
慌てて抵抗すると、ふふっと笑われて、本当こいつイライラする!

「それでもお嬢様が嫌だと仰るなら私は速やかにこの部屋を出ていきます。どうか、挽回するチャンスを」
「…その間のエネルギーどうするの?」
「それはもちろんお嬢様から!」
「いやに決まってるだろしねよ!」
「昨日のめくるめく夜の遊戯を思い返してみてください…あぁ、何て素敵なのでしょう!可愛らしいお嬢様が乱れる姿を思い起こすだけで、楽しいと思いませんか」
「(こいつ…)」
「お分かり頂けましたか?これぞあなたへの愛…です。さ、とりあえず朝御飯を食べませんか」
「わかった」
「(おや!)」
「一人で勝手にどうぞ!私は買い物行ってくる。が、滅多なことしないでね」
「え?」
「じゃあな!隅っこで埃でも食ってろ!」

−−バタン!!
乱暴に玄関のドアを閉める。
ロイドが何か言いかけたが、構わず出てきた。
そうしないと奴のペースに乗せられて、私はまた過ちを犯しそうだからだ。

「(置いて行かれた…!
勘違いとはいえ…乱暴を働いたわけですからね…。お嬢様がもっとセックス大好きニンゲンだったら良かったというのに!まぁ、素質はたっぷりお持ちのようですが)」







さて、夕飯はどうしましょう。
お嬢様の居ない部屋で私は掃除も終えまったりとした午後の時間を過ごしていた。

それにしてもエネルギー補給の方法をはじめに説明をしなくてよかった。
お嬢様が知っていたら、その場で私を解約されていたに違いない。
私のカンが伏せておこうと働いたのだがそれは正解だった。

冷蔵庫を開けると、肉も魚も夕食を作れるぐらいはあった。
玄関のダンボールには両親から送られてきたらしい野菜がいくらかある。
私は鼻歌を歌いながらメニューを考える。
ロボットも食事をとれるとはいえ、そのエネルギー充填量は本当に微々たるものだ。

「(私もこれでエネルギーが摂取出来ればいいのに)」





『ありがとうございました、またお越しくださいませ』

アンドロイド社のお姉さんが手を振る。
いろいろ話を聞いたが終始顔から火が出そうだった。

結局充電方法は性行為のみに等しいらしい。
同じセクサロイドでもあの型番だけ特別だそうだ。
なによりまだ試作機で、従来のロボットより安く買えるらしい。
セックス特化型ロボットだと、お姉さんが説明するのが頭が痛かった。

また、トラブル自体は説明書を読んでいないのならば私の方に非があるとかなんとか。
利用規約をよめば説明書読破はロボット利用前に必須だったらしい。
全く読まなかった私も浅はかすぎたにプラスして、これほどまでに現代ロボットの知識がないことを逆に心配される始末だ。ため息が出る。

けれど、良い品も手に入れた!




「お帰りなさいませ。お嬢様!」

適当に買い物を終えて家に帰ると、ロイドがにっこり笑ってお出迎えをしてくれた。
ドアが開くと、夕食の香りが鼻をかすめる。

「ただいま。ふぅ、疲れた…っわぁ!?」
「全く留守番させるだなんてお嬢様も酷いお人だ。本当…寂しかったのですよ…」

玄関先で抱き寄せられて、腕の中に閉じ込められた。
抜けだそうにも強く腰を引き寄せられて、ままならない。

「ちょっとこら!」

私が声を張り上げると、肩に手を置かれて急に体が離される。
ロイドはちょっと腰を落として、私の真ん前にその整った顔を持ってきた。

「…?」
「ただいまのキスをしましょう!」
「なっ!するか!ばか!」
「えー?」

ロイドは不服そうに私の顔を覗き込む。
かわいこぶるのが腹立たしい。靴を脱いで急いで居間に入った。

[ 4/14 ]



しおりを挟む しおり一覧
back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -