ジム | ナノ


4

ひゅう、ひゅう…呼吸の音が、妙に大きく聞こえる。
暫くして、昴さんが私の上に体を預けた

「っは…んん……寧々さん」
「はぅ、はっぁ、…はぃ…(くるしい)」
「さっきの、もう一回言ってくれ」
「?」
「俺が好き、ってやつだ…」
「ぁ、ぅ………昴さんが、好き。です」
「はぁー…俺も、俺も好き…愛してる…」
「(あいしてるだと!?)」
「実のところ、寧々さんが断れずに、俺と…居てくれているのではないかと、不安だった」
「へ」
「…まさか両思いになるなんて思わなかった。寧々さんはいつも俺のことなんて興味が無いといったふうだっただろう。未だに信じられん」
「それなら、私こそ、信じられないです」
「そうか?」
「だって、最初、生徒には手を出さない!と声高に言ってたじゃないですか」
「あー…はは」

起き上がった昴さんが照れくさそうに笑う。
見つめ合うと、暗黙の了解みたいに唇が合わさった。

「寧々さんは特別…ってことで許してくれ」
「(やべー許す!)」
「…その顔…怒ったのか?」

首を傾げて不安そうに伺いを立ててくるのは反則だと思った。
返事代わりに抱きついたら、そのままベッドにまた深く崩れ落ちて、…昴さんの寝息が聞こえる頃には完全に夢の中へ落ちていたのだった。






+


『寧々ちゃん痩せた?』
「痩せました!」
『へぇ…へぇー…なんでだろうな。何があったんだろうなぁ。二人は一体何しているんだろうなぁー』
「リーダー!」

トレーニング室で昴さんを待っていた私とリーダーの会話を丁度戻って来て聞いてしまったらしい。昴さんは眉間にしわを寄せて、私とリーダーの間に入った。

「じろじろ見ないで下さい。金とりますよ」
『別にいいじゃないか。減るもんじゃなしに、ねぇ』
「はぁ…まぁ…」
『ほら寧々ちゃんもこう言ってる』
「俺が嫌なんです」
『あらあらあら』
「あらあらあら」

私とリーダーがにやにやと昴さんを見ると、ため息を付いて持ってきた飲み物をテーブルに置いた。

『じゃあ俺行くわ。変なことするなよ』
「しません!」
「ばいばいリーダー」
「まったく…あの人は相変わらず、軟派だ」

昴さんが口を尖らす。
ちょっと拗ねているのが可愛らしいって思うのは、もうかなり彼を好きになってる証拠だ。

「どうした、にやにやして。なんか…気持ちが悪いぞ」
「そうですか?ありゃ」にへ
「…変なことしたくなったのか?」
「え!」
「嘘だ。あんまり気を抜いてると、リーダーが手を出してくるぞ。身持ちを硬くしろっていつも言ってるだろ」
「まーた説教タイムだ…」
「ぐ…俺はお前を思って」
「わかってます!ありがと、です!」
「本当にわかってるのか?」

昴さんの掌がテーブルの上の私の手に重なる。
顔を上げると、キスされた。
まさかジム内でされると思わなくて、目を丸くした。

「ほら、また気が抜けてる」ちゅ
「(ひゃー!)」
「はぁ…心配だな。できるだけ俺から離れるなよ」
「ひぃ、はい…」
「というか、離す予定がないが」


これじゃトレーニングになりそうにない…と私は思うがお構いなしに昴さんが準備をしだした。
その背中を目で追う。またヘニャヘニャ顔が緩むので、ちょっとこんな体たらくは昴さんには見せられないな、と考えるのだった。

たった一粒のチョコレートが、二粒に…なった。



END



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