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AFTER3 花火大会の夜 a

ドン!ドン!…ドン…!

外から聞こえる大きな音に、寧々は体を起こした。
続けて昴も窓の外を見る。
夕食を寧々の家で食べた金曜日、テレビから発せられるものとは明らかに異質な音に二人は顔を見合わせた。

「なんの音だ…?」
「あ!そうだ、今日は花火大会だ!」
「花火….あぁ…」





▽CHOCOLATE LIFE AFTER 3
花火大会の夜(カーセ/ラブラブ系)





「よっし!昴さん!行きましょう!」
「今からか」

いきなり支度をしだした寧々に、昴はたじろぎながらも腰をあげる。

「私の家からはちょうど他のマンションと重なって見えないんですよ!だから外行きましょう!」
「…まぁ、寧々さんが見たいなら…行くか」
「ですが!ちょっと待ってください!」
「なんだ?」

いそいそと寧々が持ってきたのは浴衣だった。

「どうしたんだ、これ」
「こっそり買ってしまいました。着ましょう!」
「俺の分まであるじゃないか」
「はい!一緒に着たくて」
「…寧々さんは変なところで準備がいいな」
「さ!着ちゃって下さい!」

半ば強引に浴衣を押し付けられて、昴は戸惑う。けれど彼女は自分の分を持って寝室に篭ってしまった。鼻歌が聞こえ来そうなほど浮ついた足取りに、昴は変に乗り気になって新品の浴衣に袖を通した。


七月の夜は生暖かい風が肌を撫ぜて心地がいい。
寧々のマンションを出ると、浴衣姿の人々が疎らに歩いていた。祭りの帰りか二人と同じでこれから見に行くのか。

寧々を助手席に乗せて、昴はエンジンをかけた。

「河川敷に行きましょう〜、あそこならきっと大きく見れます!」
「わかった」

マンションからほど近い大きな川の河川敷にはもう人がうじゃうじゃといて皆が一様に空を見上げていた。この街でも一番大きな祭りだ。花火も金がかかっていて迫力がある。

「しかしこれでは降りられないな。路駐で埋め尽くされてる」
「車から見るのも綺麗ですね!」
「そうだ、ちょっと丘に登ろうか」



Uターンして向かった先は、ちょっと小高い丘の公園だった。
若干花火は遠くなるが、それでも

「綺麗!」

寧々が車を降りて駆け出す。
こんなに見えるのに人がいない。おそらく皆、屋台のある場所に流れたのだろう。

「あまりはしゃぐと転ぶぞ」
「大丈夫です!見てください、夜景と花火ですよ」
「そうだな…、綺麗だ」
「ひゃー…」

―ドン…パラパラパラ…ッ

さすがにそろそろクライマックスのようだ。いろんな花火が続け様に打ち上げられている。

「俺の地元の花火とは大違いだ」
「そうなんですか?私は生まれた時からこの街なので、他をほとんど知りません」
「…じゃあ」

見に来るか、と口に出しそうになって昴がはっとした。地元に呼ぶってことは親に紹介という流れになるだろう。それはあまりに早いだろうかと思った途端、続きの言葉が出なかった。しかし昴の懸念もよそに、寧々が口を開く。

「いつか行きたいです、昴さんの地元!」
「…何もないところだぞ」
「それでも!どんなところで昴さんが大人になったのか興味があります」

そんなものだろうか…昴がちょっと考える。
寧々の台詞が社交辞令か本気かどうか、昴には判別がつかなかった。


向き直った夏の夜空に一際大きな花が咲いて、名残惜しそうに煌めいた。
昴が横目で寧々を見ると、うっとりと瞳を輝かせている。この大きな目に目一杯、今は花火が陣取っている。

昴の手のひらが彼女の首に回される。気がついた寧々が顔を上げると、

―ちゅ…っ

唇が合わさる。
舌を進入されて、寧々が思わず昴の浴衣を引っ張った。それでも構わず昴は彼女の体を引き寄せた。花火が去った空に見せつけるかのごとく、長い間キスに興じた。

「ぷは…っ昴さん、」
「ん…、はぁ…っ浴衣、似合ってる」
「わぁ、そうですか?昴さんもかっこいいですよ!」

たった一度のキスで、それまで本当にその気じゃなかったのに急に”そうしたく”なって、昴はきっかけを探す。
取り繕うのを忘れた昴の視線が寧々の全身をじろじろと捉えた。体を支える手はいやらしく動いて、寧々は思わず身をよじる。

「なんだか恥ずかしいです…!」
「ふ…そんな顔も可愛らしい」
「昴さんっ?」
「車に戻ろうか…」

ちょっと性急に手を引かれて、寧々は駆け足にならざる得なかった。
昴が後部座席に寧々を投げる。
そのまま自分も乗って、覆いかぶさると、ドアを閉めた。

「あ、あれ…っ!昴さん!?」
「せっかくだ。ここでしよう」
「ええー…っと!その…外ですよ!?」
「浴衣姿の寧々さん…これはヤらなきゃ損だと思わないか。それに車の中だ、外じゃない…」
「わっ!わぁ!」

指を引っ掛けただけで簡単にはだけた胸に、昴は生唾を飲んだ。露わになった胸の先に舌が触れた。

「ひゃぅ…!」
「もう尖がってる。期待しているのか」
「んっ、ひゃん、ゃぅ、ええっと!」
「…、もっとしてやる」

―ちゅぷ。ちゅ、ちゅぅぅ…っ

優しく吸うと、寧々の背中が浮く。それだけで頬を染めて、瞳を潤ませている。体も熱を帯びてきて、くったりと力が抜けてしまっていた。

「ヤル気になったか?」
「だって、昴さんが…、する、から…」
「寧々さんは素直だな…」
「ぁん…っ、にゃ、ぅ、う、昴さぁん…!」
「…、その声、腰にくる……」

片手で胸の先をくりくりと弄る。反対の胸は舌先が淫らな意思をもって囁く。寧々はすっかりスイッチが入ってしまい、興奮で酸素が変に体に入らない。
擦り合わせた両足のせいで帯がずれていく。そうしてぴちっとしまっていた浴衣は、帯だけ残してはだけていった。

「月が明るいな。結構よく見える」
「んんっ、やだ、見ないでください〜!」
「もう何度も俺に裸を見せているのに、まだ恥ずかしいのか」
「うぅ、恥ずかしい…ですよ…」
「顔を隠すな、その顔が見たいんだ…」
「わっ…!ん、ふぅ…っ」

―ちゅ…ッ
キスしながら責められる。
頭まで快楽に支配されていく。身体中を触る昴の手がそれだけで気持ちがよくて、寧々は恍惚そうに彼の瞳を見た。
昴の下半身は、目が合うだけでズクリと疼いた。主張している自身を分かって欲しくて、寧々の太ももに押し当てた。

「はぁ…っ、熱いな、クーラー入れるか」
「あわ、昴さんのが、」
「…あまり見るな…、最近忙しくてしてなかったから、…仕方ない」
「(えっでも先週の日曜にしたじゃん…!?)」
「なんだ、その目は…」

冷房がやっと入って、少し汗がひく。それでもお互いの肌にじんわり浮かんだ汗は、触れ合うたびにしっとりとくっつくから心地よい。

「…、一回出したい…。そうしないと入れてもすぐイきそうだ」
「昴さん、テンション高い…!」
「…、ちょっと浮かれてる」
「ですね!」
「寧々さんが浴衣だからか…」
「わ、私ですか!」
「そうだ。浴衣姿がこんなに似合うと思わなかった」

昴はしっかり寧々の顔を見つめて、ちょっと切なそうな声色を出した。

「こうしてる今もドキドキして、おかしくなりそうだ…」
「昴、さん…ッ」



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