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「おれ、関節技の達人なんすよ!通信講座で勉強しました!」
「よくやった恋次、どうだ、体の自由を奪われた気分は」
「最悪…」
「ふ、その屈辱的な顔、そそるな。あざといぞ、わざとかな?」
「…」ギロ
「そう睨むな。かわいいじゃないか」
「チッ…」
浅井は罰が悪そうに顔を背けた。
しかし、浅井には余裕があった。
自分が会長の攻めに屈服することはあり得ないと踏んでいるのだ。
浅井は小さい頃からガキ大将的存在をキープしており、現在の柔道部もそのカリスマ性で部員も不良たちも牛耳っていた。屈強な男どもを普段相手しているので、この華奢な女が自分より上に立つ想像ができないのだ。
「まぁ、すぐわかる。君の置かれている立場が」
にっこりと笑う会長の顔は恋する女そのものだった。
浅井は勿体無く思う。こいつが普通の女なれば…そう思ったのは彼だけじゃない、恋次以外の皆が思ったことだった。
「で、何してくれんの?かいちょーさん。折角なんで楽しませてくれよ」
抵抗するのも相手を喜ばせるため、ならばいっそこの状況を楽しんでやろう。そういう割り切りができる浅井は、にやにやと下品な笑みを浮かべる。それを見て会長も微笑んだ。
ソファベッドに仰向けに身体を預け、頭は首を掴む恋次の膝の上に不本意ながらもある状態だ。
左足だけ、床についている。
会長はそこに馬乗りになって、おもむろに首筋にキスをした。
「あーあ、浅井先輩羨ましいっすよ、本当は俺がやられたかったのに」
「恋次、だっけ?お前は本当に健気だなぁ。こんな悪趣味な女、本気で好きなのか」
「当たり前っすよ。俺は本意じゃないっすけど、直ぐアンタも好きになるっすよ」
「そう、かぁ?ぅ、」
会長の口が、浅井の口を塞ぐ。流石に上手で、思わず体に力が入った。
唇がやっと離され、会長と目が合う。それは、ヤるきに溢れた、潤んだ瞳だった。その瞳と、女の匂いに浅井はその気になる。ヤられてるのは俺なのに、まるでやってるみたいに錯覚させたからだ。
「はぁ、…」
会長の熱い吐息が漏れる。
ゆっくりと柔道着がはだけられ、露わとなる肌に会長の熱を帯びた指先が触れた。
「…(うわ、)」
浅井はその光景に釘付けとなる。
マッサージするように優しく肌を滑っていく指を見つめるうちに、行為から逃げるきっかけを完全に失ってしまった。
暫く胸を愛撫されるが今のところ感じない浅井は、手持ち無沙汰で会長を眺める。
息を荒くしながら自分の胸をさわる姿は、くるものがある。
その痴態でアレが反応しつつあった。
「ん、ん…」
甘い、押し殺した声が、たまに会長の息遣いに紛れ出す。
これはもう俺への攻めじゃなくてーー…浅井はそんな言葉をはこうとしたが空気を読んで黙っていた。
お互い下半身の衣類は何も脱がされていないが、少し反応したアレに会長の腰がおろされ小刻みに揺らしている。
この女はSを自称しているがMだな、そう確信したので、ちょっと腰を打ち付けてみると、きゅん、と反応するのがわかった。
「かいちょーさん、もう入れたいんじゃねーの?」つんつん
「ぁ、あぅ、ふ、お前こそな…」
「かいちょ、はやいっすよ、もう」
「しかし、恋次、」
「しゃーないっすね。浅井先輩、枕おいとくんで。首痛くしないでくださいよっ」
「ぁ?」
恋次が会長の背に回ったかと思えば、浅井に対して騎乗位の体制だったの会長の胸をがっしりとつかんだ。
「んゃ、あ…この!」
「かいちょ、かわい…俺、すごくたってる…っす……」
恋次の熱に浮かされた掠れた声が会長の耳の下で熱く囁くので、会長の体はぞくりと反応してしまう。
「ね、いれていいっすよね、会長、」
「ぁう、やめろ、いれられると攻めがおざなりになるだろうが、」
「な、なんだ、どういうことだ?」
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