せーとかい | ナノ






「かいちょっ!好き!付き合ってよ!」
「あぁ恋次か、それは出来ない」
「なんで!俺、会長を幸せにする自信あるのに!」
「ふ、無理だな、貴様には」
「なんで!」
「好きな人が、できたんだ」
「!?」

恋次は空いた口が塞がらなかった。
頬をは薔薇色に染まっており、窓の外を潤んだ瞳で見つめる、この目の前の女性があまりにも意外だったからだ。
生徒会長の普段は、光の無い死んだけど魚のような目と真っ白な肌が印象的な凛々しい女だった。
それが初恋を知った乙女のようないじらしさで、何処か空気を見据えている。

とはいえ、これはこれで。

「恋するかいちょもかわい〜!」
「やめろ、くっつくな!」


*恋する生徒会長




ターゲットは柔道部主将、浅井とかいうデカブツだ。
恋次はその見た目が自分とあまりにギャップがあるので少し項垂れた。

「あぁ、かいちょーはあんなのが好きなんすかぁ、見る目ないっすねぇ」
「何を言う、素敵じゃないか、是非ともくみしきたい。」
「あ、なるほど、それでこそかいちょっす!」
「そうだろう、そうだろう。さ、あいつを連れてくるのだ」
「りょーかいっす!」

ーー
「連れてきたっす!」
「おい、なんだよ、離せ!」
「ほう、近くで見ると益々…良いな」
「はぁ?生徒会長?」
「いかにも私が生徒会長だ。君に折り入って相談があるのだよ」
「相談?」

生徒会室の中にある会長の間は広く、ソファベッドまで完備されていた。
そこに浅井を座らせ、向かいに会長も腰を下ろす。
普段はここで仕事の打ち合わせだってする。
そんなシチュエーションだ。

「私と付き合う気はないか」
「ない」
「そうか…」

「どうしてもか?」
「どうしてもだ」
「なぜだ?」

浅井は少し考えたあと、きっぱりと声に出した。

「俺はSだ」
「なるほど、理にかなっている」
「どーすんすか、会長。不敬罪で罰しますか」
「馬鹿者、そんなことできるか。私の惚れた相手だぞ」
「あ、じゃあ、一度ヤればいいんじゃないすか?」
「なるほど」
「待て!」

さすがの浅井もこれには身の危険を感じた。
会長の鬼畜さは学校内では有名だった。それは勿論、夜の面でもだ。その噂はあまりにえげつなく、かなり尾鰭がついたものだったが、それを信じさせる雰囲気を会長は持っていた。

「抱くのならいいが、抱かれるのは絶対に嫌だ」
「まぁまぁ。何事も経験だぞ、浅井くん」
「そっすよー、会長のえっちはすげーから!名誉なことっすよ?」
「こら恋次、あまり褒めるな。照れる」
「参ったな。…会長、どうにかして見逃してくれよ。俺は根っからのSだから。あんたがそのなりでMだっていうなら、遊びで調教してやってもいいぜ」
「ほざけ。君はMだ」
「は、何言ってやがる」

浅井はおかしくて、思わず笑ってしまった。
しかし、会長は真面目な顔で、試してみるか、と言った。
浅井も買い言葉で、試すのは会長の方じゃねぇか、と答えた。
話の流れで答えた後に、会長の自信たっぷりな顔が浅井を急に不安にさせた。
それは何もかも見透かすような、そんな眼差しだった。

「浅井くん、なにかかんちがいをしていないか?私は別にアブノーマルな性癖を有しているわけではない」
「は?でも、アレだろ。ベッドでも女王様だって聞いてるぜ。ロウソクとか、鞭とか使うんだろ?」
「何を言ってる。そんなわけないだろう。至って普通なオーラルセックスだよ。それとも普通は嫌いかな」
「へぇ。安心したけど、意外だわ…」
「ま、ちょっ、と道具や開発はするが」
「やっぱ不安だわ…」


会長は、長くて手入れの行き届いた黒髪を持ち、色白で、切れ長な目の形と、漆のような色の瞳を持った。
その体は華奢で、初対面では学内に響き渡る悪評は直ぐには信じられないレベルであった。

一方の浅井だが、190に届きそうな身長と、立派な筋肉を蓄えた体を持ち、いつも眉間はシワを寄せ、素の顔なのに睨んでいるようだった。後ろに流した黒髪の一部分だけ赤いメッシュを入れ、同じような赤のピアスをしている。シルバーアクセサリを首から下げ…つまり見た目は素行不良の生徒そのものだった。

恋次はその二人を交互に見ながら、小柄な自身の体格を少し気にしていた。金髪が少しうねっているのは、天然じゃない。制服のスラックスの丈が彼だけ七分なのも、わざと。そんな拘りが沢山あるらしい。その拘りのひとつに、会長がいる。

「恋次」
「はーい!」
「あ?…おい、ニタイイチは卑怯だ」
「勝負に卑怯もくそもあるか。恋次、やれ」
「りょーかい!」
「やるってな、に…!!」

恋次の手がトン、と浅井の太ももの付け根、其れから二の腕の関節を叩けば、急に足と腕の自由が効かなくなった。

「なんだ、これ」

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