Nov19 23:04

森茉莉の「私の美の世界」読みました。「貧乏サヴァラン」「夢を買う話」「あなたのイノサン、あなたの悪魔」「反ヒュウマニズム礼讃」「ほんものの贅沢」の、大きな五つの編のなかに割と短めの章がいくつも収録されていて、ちょっと空いた時間にすぐ読める。学校の、休み時間とかにイヤホンをして開けば一瞬でタイトル通り森茉莉の美のセカイへ連れて行ってくれるからとてもすてき。
五つの編のなかでは「貧乏サヴァラン」がいちばんすき。このひと、食いしん坊と自負しているだけあって食べものの描写がものすごく上手で、読んでいるとすごくおなかが空きます。とくに甘いものの描写が上手いと思う。氷砂糖に熱いティーを思いっきり注いで作る冷紅茶とかすごく飲みたくなった。エヴァ・ミルクにグラニュウ糖を入れて舐めるのがすきらしい森茉莉の真似をしてしたためてみると、御伽みみは濃く入れた少量の紅茶に死ぬほど砂糖をぶち込んでティースプーンでちょっとずつ掬って食べるのがすきです。もう紅茶を飲むんじゃなくて、掬って食べる、という域。砂糖を入れる量がむつかしいところなのだけど、紅茶にとろみが出てきて、ウィルバー・ウォンカが見ただけで卒倒しそうな感じになってきたらいいと思う。あたしはストレートティーのえぐみが苦手だからいつもミルクをたくさん入れなきゃ飲めないんだけど、このときに限ってミルクはいらなくて、ストレートティーのえぐみがたっぷり入れた砂糖の甘さと交わって眩暈がしそうに魅惑的な甘さになるのである。みみさんは勝手にこれはものすごく疲労回復にいいと思っている。だけどオーガスタスくらいしかおいしいって言ってくれなさそうな気がする。
森茉莉は、あたしに似てる(ここであたしが森茉莉に似てると言わないとこがナルシズム!)。脚が嫌がる、とか。そうなの。きれいで可愛くてかっこよくて気持ち悪くて賢くて楽しくて面白いものを探しに、外へ行きたい気持ちは山々なの、でも、みみさんの脚というのは五体のなかでいっとう怠惰で弱くて、いつだって知的探究心にはやる脳ミソに向かって「拒否権を発動します!」って叫ぶのです。この子を動かすには最低一週間前くらいから準備が要るの。それも念入りに、たっぷりと余裕をもって。
あと、醜いもの、つまんないものが赦せないとこも似ている。トランジスタア・ラジオを聴くときの右手が忙しないとこなんてほんとうに共感出来る(森茉莉は、というかブリア・サヴァランのマリアは、あらゆるすきな番組の途中に、のべつまくなしにせまるおぞましきコマアシャルを耳に入れないために、絶えず右手でラジオを喋らせては黙らせ喋らせては黙らせしているのである)。聴きたくないものの、徹底的な拒否。今の世はイヤホンというものが発達して、外に出ても王国に繋がる音楽に寄り添って何とか宇宙に帰還しないで済んでいるのだけど哀しいかな、イヤホンを外して醜悪極まりない現実に生身で挑まねばならない状況というのがある。学生の御伽みみにとってそれは学校である。それでなくとも不快な声で、下卑た話をするしか能のない連中よ! 彼らがみんな、あたしのわからない、別の言語で喋ってくれたらいいのに。それか、えっちゃんやぱたのんみたいな、天使みたいな声で、秘密めいた面白いことを話してくれたらいいのにな。「虐殺器官」のクラヴィスがつけてたみたいな超高性能小型端末が開発されるのはいつか知ら。あたし、一刻も早く、見たくない人間をみんなピクトグラムにしちゃいたい。

森茉莉はこんな極端ではなくて、ほんとうのお嬢様然とした雰囲気の、とっても可愛いひとです。哲学をもっていてすききらいがものすごくはっきりしているとこがすき。人間は自分のために生きるもの。あたしはあたしの王国のために生きている。

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