Nov5 00:36

乙女よ、可愛さだけを武器に、傲慢に、自分勝手に神に反抗せよ!

きみたちは、とっても、可愛い。



“乙女のカリスマ”嶽本野ばらさまのエッセイ、乙女のバイブルと謳われる「それいぬ」。読んだ。野ばらさまのエッセイは「パッチワーク」をすでに読んだことがあって、「それいぬ」も読んで思ったんだけどこのひと面白いくらいにおんなじことしか言わないの。エッセイだけならまだしも小説でも野ばらイズム爆発。ぼくはナルシストなんですって自分で言っていただけあって、ほんとうにこのひとは自分が――というか、自分の宇宙がすきだ。
でも、野ばらさまの宇宙はそんなナルシズムに浸るのもうなずけるくらいに美しい。英語も読めないって言ってたからろくろく日本も出たことないんだろうけど、そんなのわかんないくらいに19世紀的なヨーロッパの芸術に傾倒していて、ロリータ、クラシック、バロックを愛してる。エッセイちゅうにぽんぽん飛び出す作家、画家、人形作家、漫画家の名前をいちいち調べてみると、今まで知らなかったきれいなセカイが見えてものすごく楽しいしどきどきする(でもときどきちょっと古すぎてわかんない)。
「それいぬ」で、乙女は道徳がだいすきだけど、根性ワルゆえに自分のことしか考えないって野ばらさまは言った、それが、カントがだいすきで尊敬してて彼の哲学を実践したいと思ってるのに、理性的存在たる人間をすべて尊敬とか全然出来ないあたしにすごく当てはまった。言いたくないけど救われた、感じがした。そうよ。別に理性的存在たる人間を尊敬してるから義務として善を行おうとしてるとか、全然そんなんじゃないんだもん、あたしは、あたしが軽蔑する周りといっしょがいやだから、そうしてるだけなの、小公女みたいに自分のことしか考えてないんだよ。革命の前に道徳はひれ伏すとか都合のいいこと言ってんのもそんなお手軽な道徳しか持ってないからだよ。尊敬出来るひとなんかほんとうに少ないし、アガペーの愛なんて持ってない。だいすきなひととしかいっしょにいたくない。ほかのひとの声も聞きたくないし視界に入れたくもない。「虐殺器官」のクラヴィスがつけてたみたいなコンタクトレンズ型の端末が早く開発されて、周りの人間の顔にモザイクかけられるようになってほしい。見たくないものは見たくないの。相反するふたつを矛盾なく包括してくれたのは野ばらさまだった。
でも、あたしはあなたが嫌いです、野ばらさま。野ばらさまが嫌いな理由は、バタイユとかフロイトとか読んでちゃんと確かめてからコトバにすることにする。嫌いだけど彼の宇宙はほんとうに美しいし、納得行かないところは数あれど自らの哲学を貫くさまは、かっこいい。あたしはあなたみたいな乙女にはならないけれど、あなたのように、自分の哲学を貫く乙女として生きたいと思います。

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