Nov4 19:01

2022年のクリスマス・イブ、ハワイの海底で、グレゴリオ聖歌を正確にくり返し歌うザトウクジラが発見された。その100年後、SW遺伝子と呼ばれる不老不死の遺伝子が開発された日本では徹底的な「棲み分け」が実施される。性犯罪者が隔離される新出島の少年・アキラは、データベース管理をしていた父親から死ぬ間際にICチップを託された。「SW遺伝子に関する秘密の情報が収められているそのベリチップは爆弾と同じだ。社会全体を破壊できる爆弾のような価値を持つのだ」。そして、少年の果てもなき移動が始まる――



「歌うクジラ」。少年の“移動”の物語。旅とか冒険って言うと何か間が抜けてるし、アキラも移動って言ってたから移動って言う。ほんとうは「ヒュウガ・ウイルス」より前に読んだんだけど、全然コトバに出来ない。何と言うか、前も言ったけど龍のお話は溺れるくらいのものすごい勢いで情報を浴びせかけてきて、でも最後には不思議にちゃんと龍がいちばん言いたいことだけ手に残るような、そんな感じで、この「歌うクジラ」はそのなかで輪をかけて情報量が半端じゃなくて読んでるときほんとうに溺れそうになった。脳ミソで情報が氾濫する、みたいな。わけわかんなくなるんじゃなくて、ほんとうに、呑まれるとか、喰われる、感じ。あたししか持ってないと思ってた概念を龍が描いたのも原因だと思う。「宇宙葬」とか、食事は恥だとかいうこと。唯一あたしだけが持ってる概念だとは思ってなかったけど、まさか龍が描くなんて思ってなくて、それもあって脳ミソとお話が混ざって呑み込まれそうになった。
ものすごく疑問なんだけど龍はこの景色を一体どうやって描いてるのかな、ガスケット、隔離施設、第三レジデンスから見る地球に夜が来る景色、Eポッド……想像力だけであそこまで緻密な描写が出来るの? まるで龍がほんとうに見たものを、出来る限り正確に伝えようと、見たその瞬間に隅から隅まで描こうとしているみたいに見える。
んん、ほんとうに何にもコトバにならないな、ふみちゃんがほんとうにすごい映画ってのは見終わった後にどのシーンがよかったとかそんなのはなくてただすげーって感じなんだとか言ってたけど、これがもしかしてその感じなのか知ら。ただただものすごい勢いを感じた。目の前で地球が何回もぶっ壊れるくらいのエネルギーが爆発して、そのあとに、無重力の宇宙に漂うような…… ぜんぜん上手く言えないからもうやめる。

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