青峰はいつも通り、緩い空気を纏ってやってきた。
いつも通りのんびりとダルそうに、ゆっくりと近寄って来る。



そして。


「…あん?」

黒子の状態が分かったとき、その雰囲気が鋭いものへと変わった。


怒ってる。困惑している。黒子と桃井には青峰が何を感じているか分かった。
青峰の近くにいたからこそ分かる感情の変化。

そして黒子は悟ったのだ。
桃井相手なら誤魔化しが効いたが、彼がいる現在、逃げるのは不可能だと。



「テツ。何があったのか一から十まで話せよ」

予想通りの青峰の言葉に、黒子は思い溜め息を吐いた。






今から1か月前、誠凛高校に転校生がやってきた。
名前は宮内望美。韓国人と日本人のハーフらしい。韓国人と日本人の顔立ちは似ているから自分達と変わったところは無かったが、それでもハーフという言葉は絶大だった。
確かに整った顔立ちをしているが騒ぐ程ではないはずの顔に、ハーフであるという前提があるだけで彼女を絶世の美女扱いしだしたのだ。
彼女が困っていたら助けてあげる。彼女が、彼女が、彼女が。
生徒たちは彼女をお姫様か何かと勘違いしたように接し、召使いへと変化した。
誠凛は彼女の城。そんな状態に陥ったというのに誰もがそれを当たり前とし、その異常性に気がつかなかった。

そんな中、いつでも冷静で自分を貫く彼、黒子テツヤだけか異常性に気付き、何故彼女に主従するのかと問いかけた。それが、全ての始まりである。
彼が言ったその一言は彼女を中心とする城中に一気に広まった。
黒子テツヤが、自分達の姫を貶した。
その噂はとどまることを知らず、彼女を中心とした城では黒子テツヤの存在を異端者として扱うこととなった。
異端者=排除すべきもの→いない方が姫のため。
そんな馬鹿げた考えを彼らは本気でしており、そして実行にされることとなった。

黒子テツヤを排除。排除。排除。
それを目的とした集団暴行が起こるのに時間はかからなかった。
城にいる姫が大好きな召使いたちは彼を誠凛から排除するため、毎日のように暴行を続けたのだ。




「そういうわけで、僕は3週間前から暴行をうけています」

淡々と語った黒子の話に桃井は静かに涙を流した。


酷い。酷すぎる。一体彼が何をしたというのだ!
拭っても拭っても止まらない涙をそれでも拭う桃井に黒子は苦笑した。

そして、青峰の方を向き更に引きつった苦笑をした。青峰は動かない。無表情で突っ立っているだけだ。
しかし、黒子は知っている。青峰は怒りやすい。機嫌が悪いときは睨みつけ暴れることもある。

だが、それは機嫌怒っているというより気に入らない時のことであり、本当に怒っている時は違う反応をみせる。
それが今の状態だ。
無表情で、思考を停止させる。それが青峰の怒り方。
基本馬鹿な彼は本能のみを働かし、その時に出来る最善の行動をするのだ。


そして、黒子はわかっていた。
彼が何をするのかを。






キセキの世代への報告。
それが、彼のとった行動だった。

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