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 教室に戻ると、沙夕里と癖毛くんの和解した姿が拝めた。通常運転だ。癖毛くんが沙夕里にべったりとくっついている。
 小枝がほらねと笑った。咲乃も、ややじっとりとした視線を送ってはいたが、表情自体はそれほど不快そうでもなかった。

「ごめんね、三人とも」

 癖毛くんを引きずりながら近付くと、沙夕里はすまなそうな顔をした。

「いいのよ、悪いのは乙女ゴコロを理解しない広瀬くんなんだし?」

 毎度思うのだが、咲乃はどうしてこう、いつでも喧嘩腰なのだろうか。

「おれ、超能力者じゃないし」

 癖毛くんのその返答もどうかと思うけれど。

 わたしは、飴玉の袋をつまんでニコニコしている小枝へ目をやった。
 あれ一つで喜ぶものなのか。不可思議だ。子供でもないのに、と考えたところで、しかし彼女は大和撫子からは程遠い性格であったことを思い出す。無邪気なのだ。わたしからすれば、とてもあどけない。

 そういえば、わたしは天ノ宮さんにあの飴玉をあげたのだったか。

「おー、帰ってきたな。どこ行ってたんだ?」

 ふと、教室に入ってきて声を掛けたのは、前髪くんだ。素晴らしい髪の毛は今日も元気だ。
 軽く目をしばたき、並んで立つ小枝とわたしとを見る。

「屋上だよ。詩歩くんがいてね、これ、もらっちゃった」

 早速、飴玉の入った小さな袋見せびらかす。ほう、とそれを手に取り眺める前髪くん。
 先ほどの咲乃の言葉はまだ新鮮で、わたしの中を泳いでいた。

 小枝と渡辺が付き合ってると思ってるでしょ──。

 咲乃がそう受け取った関係。雰囲気。そうであるという仮定までしていたが、実際目にしても、わたしの肌ではいまいちピンとこなかった。

「築島が屋上に、ねえ。なるほどな。小枝が飴なんて持ってるはずないから、おかしいと思ったんだ」

「たまにはいいよね?」

「俺は保障しないぞ」

「食べちゃおうっと」

 音符、特に八分音符あたりをぽんぽん飛ばして、小枝は飴玉の袋を破いた。

「椎野さんはもらわなかったわけか」

 話を振られる。

「わたしは、……昨日、もらったから」

 それが今日、あの不良くんからキャンディを受け取らなかった理由になどならないことは分かっている。
 だが、あの状況を説明するのも億劫だ。適当に返すことにした。

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