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 なるほど確かに、廊下の窓には部員募集の広告がべたべたと貼り付けられていた。運動部のものはあまり見当たらなかったが、文化部の貼紙の多いこと多いこと。
 昼の休憩時間に、迷わない程度の範囲をぶらぶらしながら、わたしと咲乃は部員募集のポスターを眺めていた。

 カラフルなものから、モノクロまで様々。階段のそばにある掲示板は激戦区なのか、画鋲の奪い合いや共用になっているようなものもあった。

「ことりー、ほんとに文化部入っちゃうの? 運動神経いいのに」

 咲乃は先ほどからバレー部の貼紙を探している。

「活動日数が少ない部活がいいから」

 吹奏楽部や茶道部など、華やかなポスターの中、わたしの目を引くものがあった。画鋲を他の部に奪われたらしく、近くの部のものを共用して、ぷらぷらと宙吊りになった紙。ボロボロな上に黄ばんでもいる。どうやら使い回しのようだ。

「あ、バレー部見っけ。そういえば、聞きたいことがあったんだけどさ」

 みすぼらしい募集ポスターの文字を一つ一つじっくり眺めながら、咲乃の言葉に「うん」と相槌を打つ。

 わたしは、そいつの、いかにも廃部寸前で人数足りてませんといったふうなのに、無理に飾って人を呼び込もうとはしない、その姿勢が気に入っていた。

「ことりって、中学のときは何部だったわけ?」

 活動日は毎週月曜、一度切りだ。体験入部期間だけは毎日活動しているそうなので、希望者は部室へ来るようにとのことだった。行って、みようか。

「陸上とか? 球技タイプには見えないし、」

「帰宅部」

「大穴でテニス? あたしも中学でテニス部は憧れたわねえ……え?」

 廊下を行き交う生徒は少ない。わたしの考えとしては、やはり、自らの教室で友達作りや談笑をしているからだと思う。従って、そこは騒がしくもない。

 そんな場所に、耳をつんざくような高音が駆けた。

「えええええっ、大穴過ぎでしょ!?」

 真横から容赦なく発せられた声に、わたしは耳を押さえてふらふらと彼女から離れるしかなかった。これは咄嗟の判断ができなかったり、防ぎようがない分だけ、ボクサーのパンチより利くかもしれない。
 とにかく、第二撃めに備えて距離を取らねば。

 そこで、不意に隣りのクラスの窓ががらりと開け放たれた。どこかで見た気のする男子生徒の顔が、ひょこんと現れる。

「あ。今のって、やっぱ咲乃の声?」

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