「はい、みんな決まったみたいなので次に進みます! 席に着いてー」

 と、沙夕里が軽やかに指示を飛ばした。葉山楓がぱたぱたっと自席に戻る。
 みんなの前に立つ沙夕里は、隣りで黒板をひたすら写す副委員長さんに何か話し掛けてからまたこちらを向いた。

「次は5月にあるフレッシャーズセミナーについて決めたいと思います!」

 教室がざわめいた。フレッシャーズセミナーって何? とか、やったー! とか。わたしはもちろんフレッシャーズセミナーなどという行事のことは知らないので、大人しく沙夕里の話の続きを待った。

「知らない人もいるみたいなので簡単に説明すると、5月24日の木曜日、一年生はみんな、『星の丘』に行くことになってます。詳しくは先生、お願いします」

 そこからは沙夕里からバトンタッチされた担任さんがざっくりと説明してくれた。5月24日の木曜日に「フレッシャーズセミナー」という名の「将来の夢についてみんなで考えるためのお泊まり会」をするらしい。「星の丘」はレジャー施設のような場所らしいが、割り当てられた部屋にこもって将来を考え、それについて作文を書くのだとか。後に発表。

 何だ、それは。どんな恥ずかしイベントだ。

 もちろん、教室中からはブーイングの嵐。
 それを見越していたのか、担任さんは余裕たっぷり、笑ってみせた。

「星の丘は空気も綺麗だし、夜になれば星がたくさん見える! 広いから作文さえ終われば遊び放題。それに、友達と一泊できるんだぞ。恋にまつわる幸せジンクスだってある。お前たち、そういうの好きだろお?」

 いとも容易くブーイングは止んだ。

「まずはグループ分けだ。みんなまだ慣れてないだろうから、俺が作ったくじを引いて決めることになるけど、いいな?」

 ブーイングはすぐに復活した。

「文句垂れたって駄目だ! さあ、引け引けー!」

 クラスメートたちは渋々といった様子で担任さんの作ったくじを引いていく。

「部屋割りはまた別だが、バスの座席はグループごとにまとまってもらって、それぞれ行きの道でのゲームを考えてもらうからな。紙に書かれている数字同士で集まるんだ」

 わたしは誰と同じグループであろうと何も大差ないので、適当に引いた。
 手のひらに乗る程度の紙を四つ折りにし、ビニール袋に入れただけの簡素なくじ。

 1、だ。

 教室はまた、ブーイングとは違ったざわめきを見せる。皆それぞれに席を立ち、仲が良い者の元へ番号を確認に急いでいた。

 そんなにグループが大事なのか。よく、わからないが。

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