それから数日、癖毛くんがダウンしている間も授業とかは進むわけで──翌日のホームルームで、沙夕里は無事に学級委員長に就任した。

 学級委員長。
 いかにも面倒臭そうな、誰もそのような役回りは望まないであろう仕事を、沙夕里は望んだのだ。

 わたしは今まで、学級委員長になる女子生徒というものを見たことがない。それがいけないことだとか不自然だとかはもちろん言わないし、むしろ、女子生徒はそうやって前に進み出るほうが自然なはずだと思う。わたし自身は厄介事に関わりたくないので、そのような行為をしたことはないが。
 委員長と副委員長は男女で構成したほうが良いとのことで、副委員長には威勢のいい男子生徒が就任。沙夕里とはまるで反対のタイプの男児だった。

 そこから、他の係を決めるため、沙夕里と副委員長さんが仕切り始めた。
 沙夕里は副委員長さんに、黒板へ係の名前を書くよう指示。

「それでは、えーと、南川(みながわ)くんが黒板に係とか委員会を書いてくれたので、やりたいところに自分の名前を書きにきてください。人数が多いところはじゃんけんになります!」

 副委員長さんの名前は南川というらしい。
 まあそれはそれとして、係。何も考えていなかった。

 とりあえずといった感じで席を立ってみる。

「ことり、何の係やるのー?」

 ちょこちょこ寄ってきた小枝は何かが楽しいらしく、うれしそうな顔をしていた。

「まだ、決めてない」
「いっぱいあるもんねー。咲乃は何か決めたー?」

 わたしの席から咲乃の席へと呼び掛ける。
 咲乃は頬杖を付いて座ったまま、「決めてなーい」と答えた。

「どうしよっかな?」

 小枝は黒板に書かれた白い文字を目で追っていく。美化委員とか、交通安全委員とか、英語係とか数学係とか、そう面白そうなものは見受けられない。

 ……が。

「あれ」

 我よ先にと名前を書きに群がるクラスメートたちの間、わたしの名字が見えたような。

「どうしたの、ことり?」
「……あれ。わたしの名前、かな」
「んー?」

 小枝がぴょこぴょこと跳び上がって名前を確認しようとするものの、小柄な彼女では無駄な気が。

「何をばたばたしてるんだよ、小枝」

 グッドなタイミングとやらで現れた前髪くんを、小枝もそのように思ったらしく、跳び上がるのを止めて彼を見上げた。

「ハル、ちょうどいいところに! あそこにことりの名前が書いてあるか見てくれない?」
「どこ?」
「あの、んー、星上祭実行委員の隣りの」
「体育委員だな。『椎野』って書いてあるけど」

 何故だ。
 というか、誰だ。

 まさか、あの不審者が勝手に書きやがったと?

「楓か? でも、あんな字だったっけ?」

 読心したのかシンクロしたのか、前髪くんがぼそりとこぼす。

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