ヒトナツの恋 | ナノ


▽ 24-選択肢


右に行くか、左に行くか。

丸井ブン太は悩んでいた。

机の上の左には新製品のチョコ、そして右にはこれまた新製品のポテトチップス。

どちらも一目惚れしたもので、今朝コンビニで買ってきてしまったものだ。

もちろんこのお菓子を全力で奪おうとするであろうワカメのような髪の後輩や、青学のくせ者には見つかっていない。


うーん、めっちゃ悩むぜぃ…

本当はどっちも、って言いてえけど柳や真田にはぜってえバレるし、幸村君も来てたら「でブン太」とか言ってきそうだしなぁ…

うお、やべ、もう昼じゃん!



ちらりと壁掛け時計を確かめて唖然とし、ブン太はお菓子の置かれた長机に両手を置いた。

お菓子とご飯は別腹であるが、早く行かないとランチコーナーの人気メニューが売り切れてしまう。

この時点で選択肢は二つ。

一つ目はお菓子を両方とも食べてしまうか。

二つ目はお菓子はおやつの楽しみとしておいて、お昼を食べに行ってしまうか。

もはや片方だけ食べるという選択肢は排除された。

再び腕を組んで悩み始めたブン太の視界の端に、誰かがふっと横切った。

お菓子から目を離してそちらを見ると、ブン太の表情が輝いた。

そして次の瞬間には悩んでいた会議室から飛び出し、廊下を歩いていた人影の腕を掴んだ。



「一色、いいとこに来た!」
「え!?あ、丸井さんでしたか」



片腕にファイルを抱え、もう片方のブン太に掴まれた方の腕の手には包みがあるナツ。

その包みに目を留め、腕を掴んだままブン太は問い掛けた。



「それ、なんだよ?もしかして食いもん?」
「お弁当です。昨日の残り物が余っちゃって、それを詰めてきただけですけど」
「俺が食う!」



お弁当と聞くやいなや高らかに宣言し、驚いた顔のナツを引っ張って会議室に連れてくる。

そして二つのお菓子を目の前にして悩んでいたことを話した。

もちろん目はお弁当に向けられたままだ。



「だから、な?このお菓子二つともやるから弁当くれ。いいだろぃ?」
「いやいやこんな残り物しかないお弁当をあげるワケには…それに丸井さんがお昼食べに行ってる間に私がお菓子取られないようにここで見張ってますよ?」
「それじゃダメなんだよ!」



もはやお菓子もお昼ご飯もどうでもいい。

ただナツが持っているお弁当が食べたい。

そう言えればどんなに楽かわからないが、恥ずかしさも邪魔して言うことが出来ない。

あーとかうーとか悩み抜いた後、ブン太は一つの選択にたどり着く。



「じゃあ俺がランチコーナー行ってランチボックス買ってくるから、それと半分ずつにして食べるってのはどうだ?」



この提案にナツはしばらく瞬きをした後、クスリと笑った。

そして「それじゃあそうしましょうか」とファイルやお弁当を机に置き始める。

それから「あ」と顔を上げ、少し照れた表情でお菓子を指した。



「あの、そのお菓子ちょっと貰ってもいいですか?実はCMで見て気になってたんです」
「もちろんだぜぃ!」



財布を掴んで、全速力でランチコーナーに向かう。

途中で誰かに「廊下を走るな」と怒られたが、気にならない。

今の彼にとって大事なのは、ナツと昼食を食べるというそれだけのことだ。





選択肢

―丸井ブン太にチャンス到来

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