風恋
4話
◇◇◇◇◇



カチコチと、怖いくらいにシンとした空間に秒針が時を刻む音が響く。


ただ怠惰な時間を無為に過ごしている。


(………眠れない)


普段からあまり薬には頼らない質なのに、今日に限っては大人しく薬を飲み、早々にベッドに入ったと言うのに、一向に睡魔が訪れる気配がなかった。


雨竜はほうと熱のこもった息で大気を震わせると、のろのろと寝返りを打った。


熱で消耗した身体は重く、くらくらと覚束ない感覚だ。


けれどそれ以上に、気分は重く憂鬱になっていた。


眠りたいのに。


このまま起きていても辛いだけなのに。


無理やり目を瞑っても、逆に意識ばかりが冴えてしまう。


そうなると、つい余計な事まで考えてしまって、雨竜は自分で自分を追い詰めることになった思考に唇を噛み締めた。


脳裏を占めるのは、ただ一人。


(黒崎………)


好きなのに、彼のようにはっきりと好きとは言えない曖昧な自分が嫌だ。


こんな状況もこんな感情も初めてで、どう対処すればいいのかなんて全然分からない。


自分がどうしようもなく黒崎に惹かれているという事は、こんなにも分かるのに。

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