風恋
3話
案の定、一護がいつものように立っていた。


そう、いつもと変わらずに。


実際、あの告白以来、自分に対する一護の態度が変わった、という事は一切なかった。


今までと同じ、ライバル兼クラスメートというスタンスを保って近寄ってくる男の姿は、あまりにも変化がなくて、かえって雨竜の方が戸惑ったぐらいだ。


一護との間にギクシャクしたものが残るだろうと、半ば覚悟していた雨竜は、思い切り肩透かしを食らった気分だった。


密かに好いている相手と気まずくならずに済んでほっとしながら、しかし、あの告白には大した意味などなかったのかと、一抹の寂しさも覚えた。


胸に秘めた恋。


たとえ一護に気持ちを打ち明けられなくても、想いはなくならない。


そもそも、その告白を断ったのは、別に彼を嫌っての事ではなかったから。


だから余計にやっかいなのだ。


無意識に、雨竜は唇にきつく歯を立てた。


「石田……?」


不意に何かを察したのか、雨竜の次の出方を伺う素振りだったその顔が、厳しいものへと変化した。


「お前………どうした?具合でも悪いのか?」


答える前に、腕を取られる。


離せ、と抗おうとして、雨竜は伸びてきた手に息を呑む。


熱でも計る気なのか、額へと押し当てられた熱い掌。


項まで一気に血が上る。


込み上げる羞恥にいたたまれず、反射的に校舎の外へと飛び出した。


「おい、待てよ!」


一護の焦ったような声が迫ってきたが、それを雨竜は無視した。


相手を拒絶するようかのように、雨竜は振り向かずに走り去った。

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