憂愁の恋
6話
無言で表情ひとつ変えないその態度は、まるで撥ね付けられているかのようで、余計に一護の神経を逆撫でした。
「何でこんな所にいるっ!!」
罵るかのように、責める言葉を叩きつける。
だが雨竜は表情を隠すように眼鏡のブリッジを指で押し上げただけだった。
「何とか言えよ!!」
「………よくここが分かったな……」
「分かるもんかよっ!!いつの間にか教室からいなくなるわ、街中捜してもいねぇわ、どれだけ捜したと思ってるんだ!!」
語気荒く吐き捨てて、一護は雨竜に近づいた。
近づいてくる靴音。
逸らされない瞳。
見据える瞳の奥で橙に揺らぐ焔の、その苛烈さに、瞬間目眩のような恐怖を感じた。
これ以上、囚われるのが怖い……。
逃げるように無意識に後退った身体は、けれど強い腕に阻まれる。
掴まれた腕に、食い込む指先。
痛みを覚える前に、相手の熱を感じた。
一護の熱さを――――。
「何で黙っていなくなったんだ?」
「………………」
「何で俺から逃げたんだ?」
「……別に、逃げたつもりは………ない」
反論はか細く、擦れていた。
その事に、雨竜は微かに眉を顰める。
だが一護は全てを見透かすように、容赦なく雨竜を糾弾する。
「最近、俺のこと避けてるだろ」
「………避けてない」
「ウソつけよ!!ここんとこ、ずっと俺の顔まともに見ねぇじゃねぇか!!」
「―――っ……」
「……ホントは、お前……初めから俺のことなんか好きじゃねぇんだろ?」
「………………」
「だから俺から逃げたんだろ!?」
「…………っ…」
「答えろよっ、石田!!」
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