憂愁の恋
5話
突き刺すような眼差しには、抑えきれない苛立ちと……どこか物憂げな影があった。
僅かに翳を増した、きつく射ぬいてくる瞳。
ひとたび戦禍に身を投じれば、どんな局面を前にしても揺るがない真っ直ぐで鮮烈な強さを持つ一護。
前だけを見つめるその瞳は、他者に憧れすら抱かせるものだというのに。
彼に、こんな切ない瞳をさせるなんて………。
自責の念に胸がずきりと痛む。
望んでいたのは、姿を消した自分を捜し当てる事ではなく、諦めさせる事だったのに。
本人が現れたところで、戸惑うばかりて、どうしたらいいのか分からない。
雨竜はもどかしげに、行き場のない想いを隠すように握った拳に力を込めた。
けれど、心の内にどれだけ感情の嵐が吹き荒れていようとも、雨竜は元よりの性格故か表面上は冷静な顔を保っていたが。
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