口づけは甘く
6話
閉じ込められた腕の中から何とか逃げ出そうと、左右にうち振られる頭、勢い良く跳ねた身体が、体格差にもめげずにジタバタと激しく抵抗する。


珍しく、雨竜は本気で嫌がっているようだった。


確かに、目が覚めたら恋人にガッツリ襲われていましたなんて、超絶シャイ(笑)な雨竜には冗談にもならないかもしれないが。


最初、逃がす気など全くなかった一護は適度にそれをあしらっていたが、噎せ始めた雨竜に、流石に呼吸が辛いだろうからと、彼の望むように一旦その唇を離してやった。


艶やかしく糸を引いた唾液から顔を背けた雨竜の顎を固定して、それでも瞳だけは至近距離のまま、ご機嫌斜めな恋人を覗き込む。


限りなく甘く、それでいてどこかこの状況を楽しんでいるかのような微笑みを浮かべて。


「やっとお目覚めか?おはよう」


「……なっ、……くろさ、き…っ…」


肩を揺らして酸素を必死に取り込みながら、雨竜はぎっと一護をきつく睨んだ。


どうも怒っているんだぞ、との彼なりの意思表示らしいが、しかしさっきまでの激しい口付けの余韻で、未だうっすら目許が潤みを帯びているような状態では、その効果はいかほどのものだろうか。


だいたいそんな瞳で睨まれたって、かえって可愛らしいぐらいだというのに。


ましてや、それが見慣れている一護でさえゾクゾクする程に色っぽくなっている、という事実の前では、ほとんど無力なのではないだろうか。

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