口づけは甘く
7話
「朝っぱらから何をしているんだ、君はっ!」
「何って、キスだろ、キス」
反省の色も見せず、しゃあしゃあと澄まして答える男に、雨竜の柳眉が逆立った。
わなわなと拳が小刻みに震え出す。
これはどうやら、怒らせすぎたかも知れない。
一護は内心でちょび〜っとだけ反省した。
一見すると冷静沈着に見える雨竜だが、案外に彼は喜怒哀楽がはっきりしている方だった。
普段はそれを面に出さないだけの事で、その内面には驚く程繊細で豊かな感情が眠っている。
そこに自分という存在が絡めば、尚更だった。
一護が傍にいるだけで、彼は極端に自分の感情を隠すのが下手くそになる。
ふとした瞬間に、ぽろりと脆い素顔を曝け出す。
一度でもその意識深くまで踏み込んだ人間には、雨竜は酷く無防備になるから、警戒なんてあってなきが如しだった。
自分だけが知る、本当の雨竜の姿。
誰よりも何よりも、この上なく愛おしい。
だからこそ、ついつい調子に乗って、朝だろうが何時だろうが際限なく愛でてしまいたくなるのだ(笑)。
もっとも、それが雨竜には些かお気に召さなかったようだが。
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